第17回 産科的エマージェンシー ~産婦人科の先生。助けて~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回は妊娠とくすりについて勉強しましたね。

 

med-dis.hatenablog.com

 

本日は女性特有の疾患について一緒に勉強していきましょう。今回の記事に関しては『女性の救急外来ただいま診断中!(井上、柴田編)』をもとに記載しています。滅茶苦茶読みやすく勉強になる本なので精読あれ。

勉強前の問題

 ① 妊婦のRed flag signを4つあげよ(復習)?

 ② Red flag signからの鑑別

 ③ 妊娠後期の緊急疾患

 ④ 妊婦の腹痛

 ⑤ 救急で必要な薬剤

 ⑥ 患者さんに対して使う言葉(参考)

 救急で妊婦が来院した場合は、『すみません。産婦人科のある病院で見てもらってください。』と言いたくなりますよね。でも、働いている病院が産婦人科のある病院であった場合は断れませんね。産婦人科コンサルト前にアセスメントしましょう。

 

17回 産科的エマージェンシー ~産婦人科の先生。助けて~

 

① 妊婦のRed flag sign (大事だから再度復習)

 妊婦のRed flag signを4つ言えるかな?

 1,子宮収縮;下腹部の痛み、生理痛のような絞られる痛み。(1時間に3~4回)

 2,破水感 ;水が流れる感じ、水溶性帯下の増加

 3,性器出血;付着程度の少量であっても一度産科に診察を依頼したほうが良い

 4,胎動減少;妊娠20週前後で胎動を完治する妊婦が多い

 女性の腹痛の回のリンクも下に貼っておきます。

med-dis.hatenablog.com

② Red flag signからの鑑別

下腹部痛・性器出血

  ~妊娠10週ごろ         異所性妊娠、切迫流産

  妊娠10週~22週       切迫流産

  妊娠22週~                切迫早産、常位胎盤早期剥離

破水感

  前期破水、臍帯脱出

胎動減少

  子宮内胎児死亡、常位胎盤早期剥離

 

③ 妊娠後期の緊急疾患

 妊娠後期の緊急疾患は以下の3つで覚えます。(ケアネットTV 『女性のミカタより』)

  1,カンカンカンと血圧上昇(高血圧で4つ)

  2,破裂しそうな腹痛(腹痛で2つ)

  3,へそ詰まり(血流障害で2つ)

 カンカンカンと血圧上昇(高血圧で4つ)

  カン(肝)   HELLP症候群。DICになることがある。

  カン(肝)   急性妊娠脂肪肝。劇症肝炎となることがある。

  カン(子癇)マグネゾール 4gと緊急帝王切開を行う。

  血圧              重症妊娠高血圧症候群はマグネゾール 4g+急速遂娩を行う。

 破裂しソウな腹痛

  破裂              子宮破裂。下腹部の持続痛であることが多い。

  ソウ              常位胎盤早期剥離は間欠期のない子宮収縮を呈し、腹部は板状硬となることが多い。

 へそ詰まり

                   臍帯脱出の場合は緊急帝王切開となることが多い。

  詰まり          羊水塞栓は肺動脈塞栓とアナフィラキシー様の血管拡張を呈する。

 

④ 妊婦の腹痛

 1、ABCの確認                           →ショックバイタル、妊娠高血圧症候群

 2,破水や出血はないですか       →臍帯脱出、早期剥離

 3,腹痛は持続通ですか              →持続痛は子宮破裂を疑う

 4,腹部を触診。収縮確認           →板状硬は早期剥離を疑う

 5,血算と肝酵素                         →HELLP症候群、急性妊娠脂肪肝

 

⑤ 救急で必要な薬剤

心血管作動薬

用法・用量

アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)

20 mg,急速静注

アドレナリン

心停止:1 mg,静注
アナフィラキシー:0.5 mg,筋注
喘息発作:0.1 ~ 0.3 mg,皮下注

アミオダロン

心停止:300 mg,静注

細胞外液

ショック:30 mL/kg/時,点滴静注

ドパミン

1 ~ 10 μg/kg /分,持続静注

ドブタミン

1 ~ 10 μg /kg /分,持続静注

ニカルジピン

0.5 ~ 5 μg /kg /分,持続静注

ニトログリセリン

スプレー:1 プッシュ(0.3 mg),舌下投与
0.1 ~ 5 μg /kg /分,持続静注

ノルアドレナリン

0.05 ~ 0.2 μg /kg /分,持続静注

べラパミル

5 mg, 5 分以上かけて静注

硫酸アトロピン

0.5 mg,静注

硫酸マグネシウム製剤

初期投与:4 g /40 mL,20 分かけて静注
持続投与:1 ~ 2 g/h,持続静注

    (臨婦産73 巻4 号・増刊号より転載)

 

⑥ 患者さんに対して使う言葉

 女性診療を行う上で、問診は大事ですが、それと同等のレベルで配慮が必要なのが品格です。言葉を選びながら問診する必要があります。下記に記す用語を用いて上手に問診しましょう。

 外陰部        →おしも

 性交渉の相手  →パートナーさん

 胎児          →赤ちゃん

 高齢妊娠      →高年妊娠

 妊娠の可能性を聞いて患者さんが「ない」といった場合は、更にその理由を尋ねましょう。「行為がないから」もしくは「避妊したから」と答えるので避妊の場合には避妊方法について更に訪ねましょう。

 また、聞きにくいことを聞く場合は『病気の原因を知るためにとても大切なので伺うのですが、』という前置きを入れましょう。

 

理解度チェック(産科的エマージェンシー)

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 1,妊婦のRed Flag signの4つは? 

 

 Ans. 1子宮収縮、破水感、性器出血、胎動減少

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いかがだったでしょうか。本日はかなりショートですが、これで終了です。

次回は授乳中患者の対応について勉強をしたいと考えています。