第20回 女性特有の腫瘍 ~女性骨盤内の悪いできもの~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回は更年期障害について勉強しました。
本日は更年期障害について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 子宮頸癌について
② Human papilloma virus (HPV)ワクチンについて
③ 子宮体癌について
④ 卵巣腫瘍について
今回は女性特有の疾患ということで女性の骨盤内腫瘍について勉強したいと思っています。骨盤内腫瘍は種類が多く、なかなかとっつきにくいイメージがあります。また、ベセスダシステムの分類表記がなかなかとっつきにくい。というのもNILM、ASCといった数字表記でもなくABC表記でもない略記表記になっているのもその一因かもしれません。一緒に勉強してみましょう。
第20回 女性特有の腫瘍 ~女性骨盤内の悪いできもの~
① 子宮頚癌について
疫学
まずは、皆さんよくご存じの子宮頚癌から。国内では毎年、約3000人の女性が子宮頚癌で死亡しており、近年、死亡数は増加傾向です。特に20-30歳代の子宮頚癌の発祥の増加が著しいとのことです。子宮癌検診は20歳以上の女性に行われています。HPVの中で子宮頚癌を引き起こすハイリスクグループは16, 18型など15種類が報告されています。
診断
前癌病変および初期癌では、細胞診、組織診およびコルポスコピーが必要不可欠です。CT、MRIなどの画像診断は臨牀進行期の決定ばかりではなく治療経過国も有用です。
ベセスダシステム
次のHPも参考にしてください。https://jsgo.or.jp/public/keigan.html
扁平上皮系
結 果 |
略 語 |
推定される病理診断 |
運用 |
陰性 |
NILM |
非腫瘍性所見、炎症 |
異常なし:定期検査 |
意義不明な異型扁平上皮細胞 |
ASC-US |
軽度扁平上皮内病変の疑い |
要精密検査 ①HPV検査による判定が望ましい ②HPV検査非施行、6ヶ月以内細胞診検査 |
HSILを除外できない異型扁平上皮細胞 |
ASC-H |
高度扁平上皮内病変の疑い |
要精密検査:コルポ、生検 |
軽度扁平上皮内病変 |
LSIL |
HPV感染、軽度異形成 |
|
高度扁平上皮内病変 |
HSIL |
中等度異形成、高度異形成、上皮内癌 |
|
扁平上皮癌 |
SCC |
扁平上皮癌 |
腺細胞系
結 果 |
略 語 |
推定される病理診断 |
取り扱い |
異型腺細胞 |
腺異型または腺癌疑い |
要精密検査:コルポ、生検、頸管および内膜細胞診または組織診 |
|
上皮内腺癌 |
AIS |
上皮内腺癌 |
|
腺癌 |
Adenocarcinoma |
腺癌 |
|
その他の悪性腫瘍 |
other malig. |
その他の悪性腫瘍 |
要精密検査:病変検索 |
組織分類
●扁平上皮病変および前駆病変
1、扁平上皮内病変
扁平上皮内病変(squamous intraepithelial lesion :SIL)、子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia :CIN)があります。CINが広く用いられており、CIN1が軽度異形成、CIN2が中等度異型性、CIN3が高度異形成及び上皮内癌に相当します。細胞診のベセスダシステムとの整合性からSILの用語が組織診断名にも採択されています。
CIN 1 |
LSIL |
軽度異形成 |
CIN 2 |
HSIL |
中等度異型性 |
CIN 3 |
HSIL |
高度異形成および上皮内癌 |
2、扁平上皮癌
多くは角化型扁平上皮癌、非角化型扁平上皮癌に再分類されます。
●腺腫瘍および前駆病変
1、上皮内腺癌
形態的には悪性の腺上皮を含む上皮内病変で、間質浸潤は示さない。
2、腺癌
A, 通常型内頚部腺癌
細胞質内粘液に乏しい円柱上皮で構成される。頚部腺癌の中で最も頻度が高い。
B、粘液性癌
豊富な細胞質内粘液を有し、亜型として、胃型粘液性癌、腸型粘液性癌、印環細胞型粘液性癌がある。化学療法抵抗性で予後不良とされる。
期別分類
TMN分類で記載される。以下の分類を参考にされたい。
(ガイドライン https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0066/G0000625/0008)
MRIやCTは実質臓器への転移の診断に使用し、リンパ節転移の診断には使用しない。頚癌の進行期分類は治療前に決定し、以降これを変更してはならない。また、臨牀進行期の決定に迷う場合には軽い方の進行期に分類する。
今回文章を読んで理解できなかった部分が、頚癌の分類は臨床分類でのみ決定されるという部分です。手術後の病理所見などに関しては頚癌以外のではpTNM分類が記載されその後の治療や予後に反映されることがあります。頸癌の場合は病理結果に関わらず術前の病期が採用されるとのことです。頚癌のこの分類方法が特殊であることが『産婦人科 研修ノート(永井良三監修)』に記載されています。興味のある方はご一読ください。
治療
初期癌
子宮頸部上皮内腫瘍3(CIN3)から子宮頚癌Ⅰa1期では病変が塩臼蓋に進展している可能性がほとんどないため、根治性を希望する場合は単純子宮全摘術となるが、妊孕性温存の希望がある場合には円錐切除の適応となる。円錐切除の機材に関しては近年レーザー蒸散法やLEEP (loop electrical excision procedure)法、超音波メス等がよく使用されている。また、妊娠中の円錐切除術では術前に縫縮術を施行することが多い。単純子宮全摘術の際は、閉経前女性では原則卵巣は温存する。
LEEP法:https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/gan/gan_fujin/gan_fujin03.html
浸潤癌
手術療法は広汎子宮全摘術でおおむねⅠB1期からⅡB期までが適応となります。
放射線療法は同時化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy;CCRT)によって向上が見られました。CCRTの普及に伴いその適応は拡大しています。CCRTに称する際の薬剤としてシスプラチンが一般的であるが、腎機能低下例に対してはネダプラチンを使用します。CCRT後の腫瘍残存例には積極的に子宮摘出を行っており、全例で基靭帯の摘出も含めた子宮摘出が可能な場合がある。
ネオアジュバント化学療法(NAC;neoadjuvant chemotherapy)施行すると、①著名な腫瘍の縮小効果が得られる②予後を悪化させることなく主治療開始を遅らせることができる。
(参考)ネオアジュバント化学療法(NAC;neoadjuvant chemotherapy)とは、手術の前に抗がん剤などを用い、腫瘍を小さくしてから切除手術を行う治療法のことです。浸潤が著しい場合の手術成績を上げるため、あるいは余分な臓器を摘出しなくてすむようにという目的で選択されます。
② Human papilloma virus (HPV)ワクチンについて
頚部扁平上皮癌のほぼ100%、腺癌の約90%の発生にHPV検出されていることから子宮頚癌の予防としてのワクチンの有用性が検討されてきました。HPV 16, 18型に対する二価ワクチンであるサーバリックスと16, 18型に加え尖圭コンジローマの原因とされる6型と11型を加えた四価ワクチンであるガーダシルが承認されています。わが国で接種後の疼痛や失神をはじめ全身の疼痛を訴える重篤な副反応が多数報告され、希望者のみの定期接種がなされています。
③ 子宮体癌について
子宮体癌の進行期は、これまで治療前に決定する臨床進行期分類であったが、子宮体癌の殆どは手術が実施されるところから、術後診断による進行期分類が採用されました。
組織分類
子宮体癌および上皮性関連病変の組織分類
前駆病変
- 子宮内膜増殖症
- 子宮内膜異型増殖症/類内膜上皮内腫瘍
子宮内癌
- 類内膜癌
- 粘液性癌
- 漿液性子宮内膜上皮内癌
- 漿液性癌
- 明細胞癌
- 神経内分泌首相
- 混合癌
- 未分化癌/脱分化癌
進行期分類
卵巣癌の場合と同様に、1995年以来手術の所見によって決定される手術朮式の決定や手術不能例には、従来からの臨床進行期分類も用いられる。
Web上でガイドラインを見ることができなかったので、簡易版として以下のHPの病期(ステージ)で体癌のガイドラインの病期分類の内容をご覧ください。
https://ganjoho.jp/public/cancer/corpus_uteri/treatment.html
治療
<手術>
子宮体癌は、術前検査によって全身状態が良好で、高度の合併症を有しないことが確認された患者については原則手術となる。術式は、単純子宮全摘手術、準広汎子宮全摘術、広汎子宮全摘術となります。それぞれの摘出部は以下のようになります。
単純子宮全摘術:子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を摘出する
準広汎子宮全摘術:子宮を支える組織の一部を含め、子宮と両側付属器を摘出する
広汎子宮全摘手術:卵管、卵巣、腟および子宮周囲の組織を含めた広い範囲で、子宮を摘出する。
<術後補助療法>
術後補助療法として、放射線療法あるいは化学療法を行います。術後補助療法施行基準としては放射線療法あるいは、化学療法を行います。化学療法としてはアドリアマイシンとシスプラチンンの併用療法(AP療法)が現時点での標準療法です(グレードB)。再発高リスク群に対してはタキサン製剤とプラチナ製剤の併用療法も提案できます。術後放射線療法は骨盤内再発を減少させるための選択枝の一つとして考慮されます(グレードC1)。
<再発>
再発例では膣断端および、膣断端以外で適応が変わってきます。以下にその内容を簡単に記します。膣断端での再発のほうが予後が良いです。腟断端再発に対する治療法は、放射線療法を勧めるがグレードBで、手術療法も考慮できるがグレードC1です。腟断端以外では孤発再発奨励および肺への転移症例では手術療法を考える(グレードC1)
Web上で見れたのはドラフトのみでした。実際に詳細を確認したい方はガイドラインを確認しましょう。
ドラフト https://jsgo.or.jp/topics/img/taigan2018/05.pdf
https://www.amazon.co.jp/子宮体がん治療ガイドライン-2018年版-日本婦人科腫瘍学会/dp/4307301382
④ 卵巣腫瘍について
分類の考え方
悪性卵巣腫瘍の80%はハイグレード漿液性腺癌(HGSC)で、卵巣癌の代名詞ともいえる癌。卵巣表層上皮ではなく卵管上皮下らの発生といわれます。卵巣のどの部分が腫瘍化したのかで卵巣腫瘍は分類されてきました。圧倒的多数が表層上皮由来で80%、次いで胚細胞由来で15%、性索―間質細胞性腫瘍由来が5%です。
詳しい分類については煩雑になりますので以下のHPを参考にしてくださいね。
http://jspqo.jp/wp-content/PDF/ransou_Presentation.pdf (P14-16あたり)
期別分類
日本での病期分類では日本産婦人科学会が出している2014年のガイドラインが最新であるが、Web上では手に入らないため、HPを紹介します。病期の部分を御覧ください。
https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html
治療方針
卵巣癌の治療方針は、手術によって組織型と手術進行期分類を元に診断します。手術前の検査で境界悪性や悪性が疑われる場合には、術中迅速病理検査を行い、その結果が悪性であれば手術中に病期を決定するために必要な処置を追加したりします。
https://ganjoho.jp/public/cancer/ovary/treatment.html
いかがだったでしょうか。次回は腫瘍つながりということでオンコロジック・エマージェンシーについて勉強をしたいと考えています。