第59回 腹痛 ~危険な腹痛は?~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。リンパ浮腫について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日も症候学で、腹痛について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 急性腹痛診療の基本の「キ」

 ② Dr林の「ウンコしたい」症候群

 ③ 激痛をきたす疾患を即断即決。炎症・閉塞・捻転

 ④ 見逃しやすい腹壁由来の腹痛

  1,腹壁皮神経絞扼障害

  2,Slipping rib syndrome

 救急外来で腹痛が主訴の患者が来たら鑑別疾患がかなり広く、嫌だなって思う先生も多いかと思います。そこで、救急外来ならではの必ず除外しておきたい疾患など要点をおさえながら勉強しましょう。

 

59回 腹痛 ~危険な腹痛は?~

 

本文内容は主に『Dr. 林の超得裏御法度 ER問題解決の極上 Tips90』を参考に記載しています。もちろんみなさんもご存じの方がほとんどと思いますDr. 林の名著ですね。研修医の先生はぜひ手にとってみてください。

Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips90 第2版

Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips90 第2版

 

① 急性腹痛診療の基本の「キ」

 急性の腹痛は基本的に解剖学的にアプローチしていきますが、鑑別診断も多いので救急疾患を意識しながら除外していくようにしましょう。

血管が敗れる・詰まるは命の危険

 血管系の腹痛のいやらしいのは腹膜刺激症状が出ないことです。痛みが強いのに腹膜刺激症状がないという時には特に注意しましょう。

 心筋梗塞:心窩部痛、嘔気、嘔吐、冷や汗は要注意

 大動脈解離:発症時間が明確。血圧左右差、上縦隔拡大。痛みの移動

 腸間膜動脈閉塞症:造影CTでは感度72-93%

 絞扼性腸閉塞:血流障害のため持続痛で腹部は柔らかい。手術歴の有無は当てにならない。

 腹部大動脈解離:後腹膜に破れ、尿管結石と誤診しやすい。炎症性腫瘤のため尿潜血は陽性になる。

 異所性妊娠:妊娠可能年齢女性には全例妊娠反応を

 肝癌破裂:肝硬変患者は元来腹水ある。CT値で出血と鑑別

 肺塞栓:肺下部の肺塞栓で腹痛をきたす

 内蔵動脈瘤破裂:まれ。造影CT

 

② Dr林の「ウンコしたい」症候群

 直腸が刺激を受けると強い便意を催してくる。それなのに便が少ししか出ない。でもトイレに行きたいと言い続ける。このような状態をテネスムス(しぶり腹)といいます。この症状があった場合に見逃したくなにのが、腹部大動脈瘤切迫破裂、異所性妊娠です。

 

③ 激痛をきたす疾患を即断即決。炎症・閉塞・捻転

 腸閉塞:間血液腹痛。手術歴。なければヘルニアを考慮。

 消化管穿孔:フリーエアを探す。

 急性重症膵炎:CTによるgradingが大切。

 急性重症胆管炎:重症敗血症に移行。早期の胆管ドレナージ

 卵巣腫瘍茎捻転:5 cm以上がねじれやすい。持続痛。

 

④ 見逃しやすい腹壁由来の腹痛

1,腹壁皮神経絞扼障害

 腹壁皮神経が腹直筋鞘を通るところで絞扼されて痛みが出ます。腹筋を使った後に多い。ちょうど臍の高さがTh10、鼠径部がTh12となります。指先を鍵上にしてピンポイントでの圧痛を探しながら触診するのがコツだそうです。

参考

前皮神経絞扼症候群(ACNES) 腹壁の感覚を支配する皮神経が, 腹壁で絞扼されることで急性経過~慢性経過の腹痛を呈することがある。腹痛は局所で、圧痛部位の最強点は指一本分程度です。圧痛は腹筋を緊張させると増悪する(Carnett試験)のが特徴的です。治療は圧痛部位に1%リドカイン 10mlを皮下注すると10-15分で疼痛は改善するそうです。

(参考HP: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2015/11/acnes.htmlすごくわかりやすいので是非参考にしてください)

 

2,Slipping rib syndrome

 右上腹部痛を訴えることから肝胆道系疾患を疑われやすいです。肋骨弓をつまんで動かすと激痛が走ります。外傷を契機に第10肋軟骨が動いて刺されたような鋭い痛みが短時間走ることがあります。バストバンドでしばらく固定します。

#参考

 Slipping rib syndromeは肋骨が通常の位置からずれた状態のことを言い、肋骨を保持するための靭帯がずれることで肋骨がずれるために痛みが生じます。第8,9,10肋骨に生じます。症状としては、背中の痛み、波のある腹痛、呼吸困難等です。原因として、喘息、気管支炎、副鼻腔炎、靭帯の脆弱化、靭帯に付着した筋肉の障害、重度の慢性咳などがあげられます。診断は肋骨縁の下に指を入れて上下に動かすことで痛みを誘発することで診断します。

(参考HP:https://www.medicalnewstoday.com/articles/320417.php#diagnosis

 

次回は『痛み』の勉強を行います。