第18回 授乳中患者の対応/産後エマージェンシー ~産婦人科の先生。助けて~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回は、産科的エマージェンシーについて勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日は授乳中患者の対応と産後のエマージェンシーについて一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 授乳中の発熱を見たら?

 ② 産後のエマージェンシー

 授乳中の患者さんが来院したときにあなたは自身を持って対応できますか。今回は女性の腹痛について一緒に学んでいきましょう。

 

18回 授乳中患者の対応/産後エマージェンシー ~産婦人科の先生。助けて~

 

① 授乳中の発熱を見たら

うっ滞性乳腺炎

 授乳婦が悪寒戦慄といったインフルエンザ症状で受診し、上気道や消化器症状がなく熱源がはっきりしないといったケースで最も疑われる。助産師による搾乳ドレナージと授乳姿勢や乳房の含ませ方の見直し指導を行う。

 乳房の外側上部が紅斑や硬結の好発部位。発熱に対する処方はアセトアミノフェンイブプロフェンを処方する。細菌感染の有無によらず授乳は継続を推奨する。

授乳中に使用される薬剤(例)

解熱鎮痛薬

カロナールイブプロフェンロキソニンなど

抗菌薬

ペニシリン系、セフェム系マクロライド

抗インフルエンザ薬

タミフルリレンザ、イナビルなど

ヘルペス

アシクロビル、バルトレックス

喘息治療薬

SABA,、LABA、ICS、LTRA、短期のステロイド内服・点滴

甲状腺

チラージン、チオウラジール、メルカゾール

片頭痛治療薬

イミグランマクサルトなど

抗めまい薬

メリスロン

上気道炎などに処方される薬剤

ポララミン、アレグラ、アレロックジルテックなど

腸炎などに処方される薬剤

マジコン、ムコダインなど

胃薬

乳酸菌製剤、ナウゼリンロペミンブスコパンなど

便秘薬

酸化マグネシウムプルゼニドラキソベロン

睡眠導入薬

デパスマイスリーなどの短時間作用のもの。依存性に注意

 以下のHPも参考にする

   成育医療研究センター https://www.ncchd.go.jp/kusuri/news_med/druglist.html

 

② 産後のエマージェンシー

・子宮内膜炎

 産後10日以内の腹痛・発熱・悪露の増加/悪臭を認めたなら子宮内膜炎を疑う

 産後感染症で昔の母体死亡原因No.1

 産後の2~10日以内のうち2日以上の発熱があった場合

 治療は、抗菌薬投与後に産婦人科へ必ず紹介します。

  ダラシン 900 mg 8時間ごと+ゲンタマイシン 3-5 mg/kg 24時間ごと

  ユナシン 1.5g 6時間ごと

妊娠高血圧症候群

 産後3ヶ月以内の高血圧を認めたなら妊娠高血圧症候群を疑う

 産後の高血圧、尿蛋白陽性には注意が必要。

 治療は、降圧薬を指示産婦人科へ必ず紹介します。

  アダラートCR 20 mg/dayなどのカルシウム拮抗薬

深部静脈血栓症

 産後3ヶ月以内の片方の下腿浮腫を認めたなら深部静脈血栓症を疑う。

 妊娠中だけでなく、産後も血栓ハイリスク状態。

 治療は、新規抗凝固薬は授乳への安全性について情報が乏しいため、急性期はヘパリンで対処する。

・周産期心筋症

 産後5ヶ月以内の呼吸不全・浮腫・易疲労感などの心不全症状を認めた周産期心筋症を疑う。

 診断基準はないが妊娠10ヶ月~産後5ヶ月以内に発症する他に原因のない心拍出量低下(EF<45%)とされている。特異的な治療はないため心不全の治療を行う。

うつ病

 産後1年以内の不定愁訴、元気がない、育児放棄を認めたら、うつ病(周産期うつ病と診断する。

 診断基準はうつ病に順ずる。

 Red flagがあった場合は必ず精神科へコンサルト。

Red flag

自殺に至る恐れがある

児を傷つける恐れがある

産褥精神病が疑われる

 

理解度チェック(授乳中患者の対応/産後エマージェンシー)

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 1,産後10日以内の腹痛・発熱・悪露の増加/悪臭を認めたら?

 2,産後3ヶ月以内の高血圧を認めたら?

 3,産後3ヶ月以内の片方の下腿浮腫を認めたら?

 4,産後5ヶ月以内の呼吸不全・浮腫・易疲労感などの心不全症状を認めたら?

    5,産後1年以内の不定愁訴、元気がない、育児放棄を認めたら?

 

 Ans. 1子宮内膜炎

    2 妊娠高血圧症候群

    3 深部静脈血栓症

    4 周産期心筋症

    5 うつ病(周産期うつ病

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いかがだったでしょうか。次回は更年期障害の勉強をしたいと考えています。