第19回 更年期障害 ~産婦人科の先生。助けて~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回は授乳中患者の対応/産後のエマージェンシーについて勉強しました。
本日は更年期障害について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 更年期障害の診断は?
② 更年期障害の鑑別は?
③ 救急外来/時間外診療でどう対処する?
④ 更年期障害の治療
⑤ 女性医療で使う漢方薬
50歳前後の女性が不定愁訴で救急外来を来院した場合。感のいい先生なら更年期障害を鑑別に上げる先生もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ更年期障害を診断してもどう対処していいかわからないという先生方も多いでしょう。今回は更年期障害について一緒に学んでいきましょう。
① 更年期障害の診断は?
更年期障害を疑った場合はまずはホットフラッシュの有無と月経の様子を聞きましょう。
更年期障害の診断は臨床診断。ホルモン値(FSH, E2など)の採血は変動が大きく診断には有用ではないとされます。更年期障害が起こりやすい周閉経期は日本人の平均閉経年齢50歳前後と考えます。
症状としては月経周期の乱れに伴い、頭頸部のホットフラッシュ、性交時痛、不眠、抑うつ、イライラ、不安、肩こり、関節痛、冷え、しびれなど症状は多岐に渡る。更年期を疑った場合には婦人科へコンサルト。
*ホットフラッシュ:上半身が焼けるように熱く、顔面が紅潮し焦燥感がある。
② 更年期障害の鑑別は?
ホットフラッシュや発汗の鑑別としては甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫、悪性リンパ腫などが上がります。
抑うつやいらいらなどの精神症状がメインの場合は、うつ病のスクリーニングも行いましょう。
うつ病のスクリーニングや診断は以下のHP参照ください
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/seiroka4501/index.html
③ 救急外来/時間外診療でどう対処する?
BATHEテクニックとはプライマリ・ケア医が使う心理療法。
BATHEテクニック
Back ground (背景) どのようなことが起きてますか?
Affect (感情) どう感じていますか?
Trouble (困っていること) どのようなことが問題ですか?
Handling (対処法) どう、対処しますか?
Empathy (共感) それは大変な状況ですね。
http://www.kcfm.jp/article.php/2017110109570845も参照してください。
④ 更年期障害の治療
更年期障害に伴う血管運動症状として認められるホットフラッシュにはホルモン補充療法(HRT)が著効します。しかし、禁忌(乳癌、脳卒中、血栓症など)が存在したり、定期フォローが必要であったり、投与方法のバリエーションがあり救急外来では処方しにくいです。
一つの方法として早期に産婦人科の受診をすすめるのも一つです。もし、どうしても対処が必要であれば、漢方を使ってみましょう。
1,当帰芍薬散:虚弱タイプ(虚証) 冷え、肩こり、めまい、頭痛、抑うつ、不眠、不安
2,加味逍遥散:中間証 のぼせ、発汗、肩こり、めまい、頭痛
3,桂枝茯苓丸:がっちりタイプ(実証)のぼせ、発汗、肩こり、頭痛、めまい
参考:ホルモン補充療法
周閉経期のhot flashにはホルモン補充療法が第一選択。第二選択はSSRI(レクサプロ、パキシル)。治療期間は5年以内とされる。
⑤ 女性医療で使う漢方薬
ここからは参考として女性医療で使う漢方薬を紹介します。
妊娠中の風邪 :桂枝湯、香蘇散など。
乳腺炎 :葛根湯。細菌感染がなくても使われる。
更年期障害 :桃核承気湯、女神散、イライラに対して抑肝散
月経困難症 :当帰芍薬散、芍薬甘草湯、イライラに対して抑肝散
過多月経 :芎帰膠艾湯(きょうききょうがいとう)
理解度チェック(更年期障害)
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1,更年期障害を疑ったときは〇〇を聞け
2,ホットフラッシュと発汗の鑑別は?
3,BATHEテクニックとは?
Ans. 1ホットフラッシュの有無と月経周期
3 本文参照ください
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いかがだったでしょうか。次回は女性の腫瘍について勉強をしたいと考えています。