第101回 風邪と訴え受診 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。めまいについて一緒に勉強しました。
本日は、風邪と訴え受診について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 発熱
② 高体温の鑑別
③ 熱中症
④ 意識障害の鑑別
本日はから臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。
第101回 風邪と訴え受診 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
本文内容は主に『イナダも学べばブリになる 林寛之、大西弘高編』を参考に記載しています。この本は研修医向けに書かれた本ですが、臨床推論をこれから勉強したいという先生にも非常に良い本だと思います。もし、興味があれば一読してみてください。
イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる: 現場のプロと臨床推論のプロが教える診断能力アップ術
- 作者: 林寛之,大西弘高
- 出版社/メーカー: 南山堂
- 発売日: 2017/08/03
- メディア: 単行本
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① 発熱
発熱と聞くとつい感染を考えがちですが、高体温の可能性を鑑別に入れたいです。もし意識障害がある場合は髄膜炎や敗血症は必ず鑑別しましょう。そして1) 血圧≦100 mmHg、2) 呼吸数≧22/分、3) 意識変容のうち2つ以上あれば敗血症を疑います。発熱は感染などで中枢神経が熱をあげるように主体的に命令しているのに対して、高体温は中枢神経以外の原因から受動的に熱が上がるものを指します。そのため、解熱鎮痛薬は、発熱には効果がありますが、高体温には代謝による熱産生を惹起するため禁忌でありcoolingが有用となります。
どんなときに高体温を疑うかですが、感染症を検索したが感染巣がはっきりしない場合だけではありません。急性発症の高体温の鑑別は、熱中症、薬剤熱、悪性症候群、セロトニン症候群、悪性高熱症、甲状腺クリーゼなどあまり見かけないものが多いです。そのヒントとなるのは問診です。高体温の問診のキーポイントを以下の表に記します。
内服薬とその直近1週間の変更 |
神経・精神疾患の既往と、その治療 |
直近1ヶ月の入院・手術・治療歴 |
最近の精神状態・認知機能の変化 |
近日の感冒や脱水などの体調変化 |
家の気温、クーラー使用の有無、熱帯夜だったか |
甲状腺疾患の有無と、その治療 |
イベントや畑仕事などでの外出と、その熱中症対策 |
② 高体温の鑑別
悪性症候群は除外診断で国際的なクライテリアはないです。抗精神病薬内服中の患者や内服薬を調整した患者で、発熱と筋固縮や精神状態の変化が出現した場合は悪性症候群を疑う必要があります。発熱+筋固縮+精神状態の変化+CK上昇が揃えば、悪性症候群と推定し、原因薬剤の中止と治療を行うことが推奨されています。同様に、発熱+精神状態の変化+筋固縮が起こりうる疾患として、熱中症、薬剤熱、セロトニン症候群、甲状腺クリーゼがあります。これらの鑑別のヒントは以下の表にまとめます。
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例 |
暴露から症状発現まで |
患者像 |
重要な検査所見 |
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運動 高温環境 |
マラソン大会 暑い部屋(車内) |
暴露中~半日程度 |
若年者:皮膚湿潤、発汗著明 小児・高齢者:皮膚乾燥 |
CKの上昇 ミオグロビン尿 |
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薬剤熱 |
種々の薬剤 |
抗菌薬 抗てんかん薬 |
投与中~投与終了後いつでも |
全身状態良好で比較的徐脈 Septicな印象がない |
特徴的な所見なし |
ドパミン受容体阻害薬 |
他多数 |
7日以内 (多くは1~3日) |
無動、不動、無表情で中空を見つめている |
CK上昇、ミオグロビン尿 |
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セロトニン症候群 |
セロトニン作動薬 |
他多数 |
24時間以内(多くは12時間以内) |
興奮、支離滅裂な会話、著しいミオクローヌス |
特徴的な所見なし(CK上昇は30%弱) |
甲状腺クリーゼ |
甲状腺機能亢進症 |
無治療・コントロール不良の場合 |
- |
精神状態の変化、発熱 頻脈(≧130/分) 心不全症状、消化器症状 |
FT3上昇、FT4上昇、TSH下降 |
③ 熱中症
これらの高体温の鑑別のうち日常臨床で最もよく遭遇するのが熱中症です。中枢神経症状を伴う熱中症は、まずは運動性熱中症と古典的熱中症は必ずしも脱水をともなわないので、超音波で下大静脈を観察しましょう。合併症は大きく4つで、横紋筋融解症、高K血症、低Ca血症、高尿酸血症です。
④ 意識障害の鑑別
意識障害の鑑別診断は難しく、その理由として患者本人からの病歴聴取ができないことがあること、鑑別診断の数や領域が多いこと、重症疾患、まれな疾患を含むことなどがあげられます。
患者本人から聴取ができなくても付添がいれば普段との状況の違いを情報収集できます。外出中の意識障害で家族や友人などがいない場合には、本人情報(年齢、基礎疾患、常用薬などを含めて)を確認するために所持品を探るような場合もあります。
・早期閉鎖
救急外来のような動的な医療現場では、時間の要因も臨床推論を進める上で非常に重要となります。このような状況で、最も診断過誤につながる要因として重視すべきことの1つは早期閉鎖です。早期閉鎖とは、「初期診断に到達し、それ以上の可能性を追求し損なう」ことを意味し、情報の統合、初期診断の確認がうまくいかないときに生じます。認知的な診断過誤要因として情報統合の問題が多いこと、その中でも早期閉鎖の割合が高いことを指摘されています。鑑別診断を広くあげることでより慎重に考えをすすめることが可能となり、早期閉鎖を防ぐことができます。
・治療開始の意思決定
早期閉鎖を防ぐために、診断が完璧になるまで治療を開始してはいけないということではありません。例えば救急外来に患者が到着した時点で、酸素投与、静脈ライン確保を躊躇なく開始する場合も多いです。治療を行う際には現時点での診断において治療を行った場合、治療を行わなかった場合に比較検討し、リスクよりもベネフィットが十分大きいと判断できた場合には、さほど躊躇しなくても良いということがわかります。
いかがでしたか。次回は『夜間頻尿、体重増加.』の勉強を行います。