第97回 TAFRO症候群、薬剤性血小板減少症 ~鑑別診断と治療について考えよう~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。血液がん患者の緩和医療、病的骨折の予防と疼痛管理について一緒に勉強しました。

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本日は、TAFRO症候群、薬剤性血小板減少症について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

① TAFRO症候群

② 薬剤性血小板減少症

 

 本日は血液内科疾患について勉強してみましょう。血液内科疾患は専門性が高く手を出しにくいと考えがちですが、実際どのような疾患を鑑別にあげ、治療を行っていけばよいか考えておく必要があると思います。今回は第十三弾として血液がん患者の緩和医療、病的骨折の予防と疼痛管理について勉強しましょう。

 

97回 TAFRO症候群、薬剤性血小板減少症 ~鑑別診断と治療について考えよう~

 

本文内容は主に『レジデントのための血液教室 宮川義隆著』を参考に記載しています。この本はレジデント向けに書かれていますが、なんといっても読みやすいです。血液疾患の勉強の最初のとっかかりにしてみてはいかがでしょう。

レジデントのための血液教室〈ベストティーチャーに教わる全6章〉

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① TAFRO症候群

 2010年に日本で提唱された新たな疾患概念で、血小板減少(Thrombocytopenia)、全身性の浮腫(Anasarca)、発熱(Fever)、骨髄の線維化(Reticulin fibrosis)、臓器腫大(Organomegaly)の頭文字をとってTAFRO症候群と命名されました。

・診察のポイント

 原因不明の発熱、血小板減少による出血症状、全身性の浮腫(胸水、腹水)があれば、TAFRO症候群を疑います。鑑別すべき疾患として悪性リンパ腫、がん、膠原病感染症などがあり、丁寧に理学的所見を取ります。類縁疾患のキャッスルマン病と異なり、リンパ節の腫大は目立ちません悪性リンパ腫との鑑別診断が必要なときは、リンパ節生検を行います。肝臓と脾臓が腫れていることが多いです。

・検査

 血小板減少、胸水・腹水を認めます。リンパ節生検でキャッスルマン病様の病理所見を認めます。骨髄の細網線維化または巨核球の増加、肝脾腫、軽度のリンパ節腫大、進行性の腎障害を認めます。欧米におけるキャッスルマン病と異なり、HHV-8とHIV感染症の感染はありません。

・鑑別診断

 不明熱、胸水・腹水、血小板減少があることから、がん、膠原病感染症、POEMS症候群、IgG4関連疾患、肝硬変、キャッスルマン病との鑑別診断が必要です。POEMS症候群と異なりモノクローナル蛋白はありません。また、IgG4陰性より、IgG4関連疾患を除外診断します。キャッスルマン病と異なり、TAFRO症候群ではγ-グロブリンが増えていないこと、体液貯留が進行性で腎機能障害があることから鑑別診断を行います

・治療

 副腎皮質ステロイドプレドニゾロン)を第一選択とします。第二選択としてリツキシマブ(保険適応外)。トシリズマブ(保険適応外)、シクロスポリン(保険適応外)などが挙げられるが、希少疾患のため確率した標準的治療はありません。

 

② 薬剤性血小板減少症

 初診外来で診察する血小板減少症の原因として最も多いのは薬剤性血小板減少症です。健康診断、もしくはかかりつけ医の採血検査で偶然見つかることが多いです。血小板を減らす薬剤として、抗がん剤と抗リウマチ薬の葉酸代謝拮抗薬(メトトレキサート)は、作用機序から起きることは想像できます。その他、てんかん薬、解熱鎮痛消炎剤、抗菌薬は、体内で新たな抗原となり、免疫反応で血小板が破壊されます。外来で慌てて骨髄検査をしなくても、丁寧な問診で被疑薬を絞り込み中止すれば数日で血小板数が回復して、患者と紹介医に感謝されます。

・診察のポイント

 偽性血小板減少症と異なり、実際に血小板が減少するため、皮下出血版を認めます。被疑薬は過去4週間以内に始めたものが多いとされますが、半年間服用していた薬剤でも起こることがあります。遅れて発症する機序は不明です。血小板減少に躍進を伴えば診断をつけやすいです。

・検査

 薬剤アレルギーの原因薬剤を検索するための検査としてDLST(drug-induced lymphocyte stimulation test:薬剤によるリンパ球刺激試験)があります。

・鑑別診断

 免疫性血小板減少症(ITP)膠原病、骨髄異形成症候群(MDS)、急性白血病HIV感染症、肝硬変など血小板が減少する疾患との鑑別を進めます。薬剤性血小板減少症に特異的な検査はなく、被疑薬を中止して数日後に血小板数が正常化すれば診断に至ります。DLST検査は補助診断として有用ですが、必ずしも全例で陽性にはなりません

・治療

 疑わしい薬剤を中止します。高齢者では複数の治療薬を服用していることが多いため悩ましいですが、最近始めた薬剤から中止するのも1つの方法です。薬剤性血小板減少であれば、薬剤の中止後、数日で血小板数は回復します。重症例は急性ITPとの鑑別診断が難しく、免疫グロブリン大量療法、血小板輸血、副腎皮質ステロイドで対応して軽快する症例もあります。

 

いかがでしたか。次回は『頸部の腫れ』の勉強を行います。