第107回 腰痛 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。四肢のしびれについて一緒に勉強しました。
本日は、腰痛ついて一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① はじめに
【Step 1】診察室へ入ってくるあるき方や姿勢に注目します
【Step 2】red flag signを特定する
【Step 3】痛みの性状を聴取する
【Step 4】患者背景を把握する
【Step 5】心理・社会的要素を聴取する
本日は臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。
第107回 腰痛 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
本文内容は主に『外来を愉しむ 攻める問診』を参考に記載しています。この本は系統的に問診から鑑別診断を絞っていく方法が書かれており、わかりやすいです。臨床能力をあげたいと考える先生は是非読んでみてください。
外来を愉しむ攻める問診 (Bunkodo Essential & Advanced M)
- 作者: 山中 克郎
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① はじめに
腰痛診療の基本は、腰痛の性状から始まり、患者背景、生活習慣など様々な病歴を聴取します。多くの方が腰痛症で病院にやってきますが、多くは急性腰椎症、腰椎捻挫と呼ばれる確定診断不能な病態でありこれらは自然に治癒するものばかりです。しかしながら腰椎診療の醍醐味は様々な鑑別診断に迫ることを意識して診療を進めていくことです。
【Step 1】診察室へ入ってくるあるき方や姿勢に注目します
診察室へ入ってから椅子に座るまでの短い時間に、診断につながる多くの情報が得られます。苦痛の表情で歩いてきた患者が、椅子に座ると表情が改善している場合は胎動誘発性の病態が考えられます。歩行の様子を観察し、足が出にくい、上がりにくい、歩幅に左右差があるなど神経症状を疑う所見は後で必ず筋力低下や感覚異常、膀胱直腸障害に関する症状について聴取すべきです。
【Step 2】red flag signを特定する
本日はどうなさいましたか?とopen questionの質問から患者の訴えを聞いた後にまず重要なことは、ここで疾患を絞らないことです。まず、見逃しては行けない疾患をしっかり確認することである。腰痛では特に、血管系、悪性腫瘍、感染症、神経症状をきたす病態の4つを意識して診療に当たりましょう。特に神経症状が疑われた場合には膀胱直腸障害を聞くようにしましょう。「最近、排尿や排便が思わず漏れてしまうことはないですか?」と尋ねましょう。
Red flag sign |
鑑別疾患 |
50歳以上 |
悪性腫瘍、圧迫骨折、大動脈瘤 |
4週間以上持続する痛み |
悪性腫瘍、感染症、強直性脊椎炎 |
圧迫骨折 |
|
がんの既往 |
悪性腫瘍 |
発熱、悪寒・戦慄 |
|
発熱、体重減少 |
悪性腫瘍 |
安静時痛 |
悪性腫瘍、感染症、強直性脊椎炎 |
激痛 |
感染症、脊髄圧迫 |
下肢の脱力、しびれ |
椎間板ヘルニア、馬尾症候群、脊髄圧迫 |
肛門周囲のしびれ、失禁、性機能不全 |
馬尾症候群 |
【Step 3】痛みの性状を聴取する
痛みの性状について必ず把握すべきは発症形式です。外傷エピソードのない突然発症の痛みは、血管や消化管などの臓器が詰まった、破れた、裂けた、捻れた病態を考えます。徐々に痛くなった場合は腰部脊柱管狭窄症などの変性疾患や悪性腫瘍、感染症を疑います。痛みの増強因子として、体動によって痛みが悪化する場合は筋骨格系を疑います。特に脊椎転移などの悪性腫瘍では安静時痛が特徴です。
【Step 4】患者背景を把握する
基礎疾患:高血圧や脂質異常症、糖尿病などの血管イベントリスクや悪性腫瘍の既往、ステロイド免疫抑制剤の内服については必ず聴取します。また、外傷のエピソード(交通外傷や転落、高齢者や骨粗鬆症のある患者では転倒や重い荷物の持ち上げ)は、圧迫骨折の可能性を考えます。
年代:腰痛は小児期から青年期、中年そして高齢者とどのような時期にでも起こる。年代によって発症頻度が異なるため、慢性に繰り返す腰痛である場合は発症時期を確認します。
性別:女性では子宮内膜症、子宮外妊娠、骨盤内炎症疾患が腰痛の原因となるため、月経周期や性活動に関する問診を行います。男性では前立腺炎による関連痛で、腰部下部から会陰部にかけて痛みを認めることがあります。
生活歴:筋骨格系にストレスをかける仕事やスポーツの習慣を聴取する。小児・青年期の非特異的な腰痛の原因には、重たいリュクサックや柔らかいベッドマットレス、乳房が大きく発達することも原因とされています。
【Step 5】心理・社会的要素を聴取する
心理・社会的な病歴聴取は慢性化する腰痛疾患(うつ病、不安障害、解離性障害、線維筋痛症など)として重要です。家庭や学校、仕事でのストレスやライフイベント、睡眠状況などを聴取します。忙しい外来では以下の質問でうつ病のスクリーニングをしましょう。
・この1ヶ月で気分が沈んだり、落ち込んだり、絶望したりしたことがありましたか?
・この1ヶ月で物事への興味や楽しみがなくなったことはありませんか?
両方の質問に「はい」と答えた場合は感度97%、特異度57%となります。
いかがでしたか。次回は『咳・痰』の勉強を行います。