第100回 めまい ~どのような鑑別診断をあげますか?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。バイタルサイン、腹部診察、せん妄について一緒に勉強しました。
本日は、めまいについて一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① めまい
② スクリーニング診察と絞り込み診察
本日はから臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。
第100回 めまい ~どのような鑑別診断をあげますか?~
本文内容は主に『イナダも学べばブリになる 林寛之、大西弘高編』を参考に記載しています。この本は研修医向けに書かれた本ですが、臨床推論をこれから勉強したいという先生にも非常に良い本だと思います。もし、興味があれば一読してみてください。
イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる: 現場のプロと臨床推論のプロが教える診断能力アップ術
- 作者: 林寛之,大西弘高
- 出版社/メーカー: 南山堂
- 発売日: 2017/08/03
- メディア: 単行本
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① めまい
めまいといえば、内耳か脳かと考えがちですが、前失神の症状でも患者さんはめまいと表現します。必ず前失神を鑑別に上げましょう。前失神の中でも心血管失神(致死性不整脈、心筋梗塞、心不全、大動脈解離、肺塞栓症など)は一年後死亡率33%にものぼるため、特に見逃したくないです。消化管出血や異所性妊娠などによる起立性失神も要注意です。
めまいの分類を以下の表に示します。
回転性 |
内耳 vs 小脳・脳幹 持続時間、神経所見が決め手。決して意識は薄れない。 |
前失神 |
起立性失神(出血、貧血、脱水、薬剤性など) 神経調節性失神(驚愕、痛み、排便、排尿など) |
浮動感(分類不能) |
まずは上記の両方を鑑別します。視覚から小脳、脳幹、脊髄に至るまですべての経路の異常に加えて、高血圧や精神疾患などもじっくり鑑別していきます。 |
回転性めまいなら、内耳疾患または小脳・脳幹の障害を探します。回転性と患者が言わないことも多く、回転性かどうかにこだわることなく、突発性か否か、持続時間に注目するほうが診断に有用です。小脳失調を評価する時には、指鼻試験と回内回外試験だけではなく座位での動揺性と歩行障害をみる必要性があります。脳幹については、複視、顔面知覚異常、顔面神経麻痺、難聴、構音障害をチェックします。難聴や耳鳴りの多くは末梢性内耳障害だが、まれに前下小脳動脈の閉塞でも急性の難聴が起きます。難聴を伴う回転性めまいだからといって安易に末梢性めまいと飛びつくと痛い目にあうことになります。顔面知覚に関しては脳幹での三叉神経の支配領域は口の周りに同心円状(onion peel)に分布しているためV1, V2, V3と調べる方法では不十分です。
末梢性めまいでは多い順に、BPPV、前庭神経炎、メニエール病となります。BPPVならDix-Hallpike試験では潜時数秒、持続時間1分以内にめまいが改善し、じっとしている時には眼振があってはいけません。前庭神経炎では感冒症状に続発する場合が半数で、安静時にも眼振があり、持続時間は数日となります。メニエール病では聴覚症状を伴い持続時間は数時間で、繰り替えるのが特徴です。初発では診断できません。
MRIが簡単に使用できないプライマリ・ケアで有用なのだがHINTS法です。どれも中枢性でなければなんと感度ほぼ100%で脳梗塞を除外できます。
Head Impulse test |
頭位の急速な回転に対して眼球かが遅れると末梢性 |
Nystagmus |
垂直眼振や注意方向性なら中枢性 |
Test of skew |
片側の視野を遮った際に対側の眼球が垂直方向に揺れれば中枢性 |
② スクリーニング診察と絞り込み診察
診察にはスクリーニング的に行うものと、絞り込みのために行うものがあります。例えば、めまいのある患者に対しては、とりあえず神経診察はしたいと思います。どの診察項目をスクリーニングに含めるべきかについては、場や専門家によって少しずつ考えが異なるため、統一した見解を得るのは難しいです。救急外来では意識状態や末梢動脈血酸素飽和度を含めたバイタルサインに加え最低限の全身診察を行うことが多いと思います。
神経診察はスクリーニングと焦点を絞ったものがあります。例えば協調運動に関しては企図振戦、指鼻指試験、踵膝試験、反復拮抗運動障害、指タッピング試験、脛タッピング試験などがありますが、どれがスクリーニングに向いているのかという見解はいまのところなさそうです。
いかがでしたか。次回は『風邪と訴え受診』の勉強を行います。