第90回 血球貪食症候群と伝染性単核球証 ~診断と治療について考えよう~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。赤芽球癆、無顆粒球症について一緒に勉強しました。

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 本日は、血球貪食症候群伝染性単核球症について一緒に勉強していきましょう。

 

勉強前の問題

① 血球貪食症候群

② 伝染性単核球症

 

 本日は血液内科疾患について勉強してみましょう。血液内科疾患は専門性が高く手を出しにくいと考えがちですが、実際どのような疾患を鑑別にあげ、治療を行っていけばよいか考えておく必要があると思います。今回は第六弾として赤血球の異常である赤芽球癆と無顆粒球症について勉強しましょう。

 

90回 血球貪食症候群と伝染性単核球証 ~診断と治療について考えよう~

 

本文内容は主に『レジデントのための血液教室 宮川義隆著』を参考に記載しています。この本はレジデント向けに書かれていますが、なんといっても読みやすいです。血液疾患の勉強の最初のとっかかりにしてみてはいかがでしょう。

レジデントのための血液教室〈ベストティーチャーに教わる全6章〉

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① 血球貪食症候群(hemophagocyic syndrome

 血球貪食症候群には先天性と後天性があります。後天性は、ウイルス感染(EBウイルス、CMVなど)、悪性リンパ腫膠原病(成人発症Still病など)が原因となります。高サイトカイン血症により活性化したマクロファージが血球を貪食し、汎血球減少をきたします。1割は重症化し、肝細胞、DIC、多臓器不全により死亡します。別名マクロファージ活性化症候群、海外ではhemophagocytic lymphohistiocytosisi;HLHと呼ばれます。

 基礎疾患の種類により、ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)、リンパ腫関連血球貪食症候群(LAHS)とも呼ばれます。

・診察のポイント

 発熱、脾腫、血球減少、肝障害を特徴とします。38℃を超える発熱のため、体力を著しく消耗します。重症例では肝障害が進行して黄疸をきたし、血小板減少とDICを合併すると全身に皮下出血斑を認めます。

・検査

 発熱、血算(2系統以上の血球減少を認める)。凝固検査、血性フェリチン高値sIL-2R高値、高トリグリセリド血症、低フィブリノーゲン血症、骨髄検査(マクロファージによる血球貪食像)各種ウイルス検査(EBV、CMV造影CT検査(悪性リンパ腫の有無を確認)

・鑑別診断

 不明熱の精査で紹介されることが多いです。38℃を超える発熱が続き、膠原病感染症(感染性心内膜炎、腫瘍)、がん(悪性リンパ腫)の鑑別診断を進める中で、汎血球減少症と肝障害が急速に進行することで気がつきます。その際、血性フェリチン>500 ng/mLsIL-2R>2,400 IU/mLが目安となります。骨髄穿刺を行い、抹消塗抹標本でマクロファージによる血球貪食像を確認して血球貪食症候群と診断します。血球貪食像が見つからななくても、臨床的に血球貪食症候群と診断して治療を開始してもよい。

・治療

 基礎疾患の治療に加えて、副腎皮質ステロイドステロイドパルス療法)、輸血(赤血球、血小板、新鮮凍結血漿)を行います。重症例に対して抗がん剤のVP-16、免疫抑制剤のシクロスポリンとステロイドを併用することもあります(いずれも保険適用外です)。LAHSは原疾患の悪性リンパ腫に対する化学療法(R-CHOPレジメン)を行います。家族性HLHの根治療法は造血幹細胞移植ですが、アメリカではIFN-γに対する抗体医薬が実用化されています。

 

② 伝染性単核球症

 子供の9割は、幼少期にEpstein-Barrウイルス(EBV)に感染を経験します。未感染の若者が、初めてキスをすると唾液を介してEBV感染が成立します。このうち最大7割が伝染性単核球症を発症します。感染から数週間後に発熱咽頭炎、両側頚部のリンパ節腫大が現れます。採血では白血球が1万/μL以上に増え、しかも異常細胞があるため、プライマリケア医が急性白血病を疑うことがあります。

・診察のポイント

 発熱、咽頭炎扁桃腺腫大、両側頚部の圧痛を伴うリンパ節腫大軽度の脾腫を認めます。前医でペニシリンを処方されていると薬疹が見られます(ペニシリン系薬剤の投与は禁忌)。これらの症状は数週間で自然軽快します。左脇腹の痛みを訴える患者は脾梗塞を疑い、造影CT検査にて脾臓破裂の危険性を評価します。

・検査

 通常、10%以上の異型リンパ球を含む白血球数の増加を認めます。白血球数は1万~2万/μLになることが多いです。EBVはBリンパ球に感染するが、反応性にCD8陽性細胞が増えます。9割以上の症例で肝機能障害を合併します。急性期はウイルスカプシド抗原(VCA)に対するVCA-IgM抗体、VCA-IgG抗体が陽性となります。VCA-IgM陰性、VCA-IgG抗体陽性、抗EBNA抗体陽性であれば過去の感染と診断します。

・鑑別診断

 全腺性単核球症の9割はEBV感染が原因であるが、サイトメガロウイルスCMV)、HIV感染でも起こりえます

・治療

 伝染性単核球症は数週間で自然経過します。高熱が続いて体力を消耗するようであれば解熱剤を処方しましょう。原則として入院は不要ですが、食事がとれないことによる脱水症、脾梗塞を合併する場合は入院措置とします。

 

いかがでしたか。次回は『血球貪食症候群伝染性単核球症』の勉強を行います。