第105回 発疹 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
第105回の記載が抜けてましたので追加します。
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。浮腫について一緒に勉強しました。
本日は、発疹ついて一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① はじめに
【Step 1】発疹の診療は皮膚科言語で
【Step 2】open questionから始め、closed questionに移行する
【Step 3】発熱+発疹のred flag signを見落とさない
【Step 4】red flagの確認
【Step 5】アレルギー性疾患かどうかを考える
【Step 6】薬疹 vs その他
【Step 7】中毒疹という病名
【Step 8】いつも心に内科的な疾患が隠れていないかと考える
本日は臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。
第105回 発疹 ~どのような鑑別診断をあげますか?~
本文内容は主に『外来を愉しむ 攻める問診』を参考に記載しています。この本は系統的に問診から鑑別診断を絞っていく方法が書かれており、わかりやすいです。臨床能力をあげたいと考える先生は是非読んでみてください。
外来を愉しむ攻める問診 (Bunkodo Essential & Advanced M)
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① はじめに
皮膚科では発疹に対して問診で診察することは殆どないそうです。しかし、皮膚科として診療しない内科医にとって発疹に関しても問診は重要なツールであることは間違いないでしょう。問診をしっかりとることで皮膚科専門医に紹介できるように勉強しましょう。
【Step 1】発疹の診療は皮膚科言語で
まずは発疹とカルテに書くのはやめましょう。発疹の名称を書くことで皮膚科専門医の先生は鑑別診断を絞り込むことができます。ちなみに発疹は皮膚に出現する肉眼的な変化(紅斑、びらんなど)の総称であり、湿疹は発疹のうち赤くてかゆみのあるものを言います。
色の変化:「斑」 |
・紅斑(血管拡張が主体となっているもの。圧迫で退色) ・紫斑(内出血を起こしているもの。圧迫しても退色しない) ・白斑(色素の脱出や、血管の収縮などによる) ・色素斑(メラニン色素の沈着。表皮なら黒く、真皮なら青い) |
隆起性変化 |
・丘疹(0.5 cm程度)→結節(1~3 cm程度)→腫瘤(3cm以上) |
その他 |
・水疱(丘疹の内部に滲出液が貯留する状態) ・びらん(表皮に限局した組織欠損) ・潰瘍(真皮より不快組織欠損) ・痂皮(いわゆる”かさぶた”)など |
【Step 2】open questionから始め、closed questionに移行する
まずは、「あなたの皮膚にどんなことが起こっているか教えて下さい」というopen questionから始めます。そしてclosed questionに変えることで患者の全体像を把握しやすい。特に原因物質(食物アレルギーや薬剤アレルギー)、原因物質摂取からの発症時間(アレルギータイプの想定)、発疹と発熱の順番[伝染性膿痂疹(とびひ)、手足口病、伝染性紅斑など夏季の感染症]、リンパ節腫脹の有無(伝染性単核球症、白血病、リンパ腫)が有用な情報となります。
【Step 3】発熱+発疹のred flag signを見落とさない
発熱+発疹を見たら危険と思う発想をもちましょう。もちろん伝染性単核球症など健常者ではあまり重症化しない疾患や、全身性エリテマトーデス、Still病、Sweet病などは専門的な治療介入が必要ですが、1分1秒を争う疾患ではないものも多いです。特に絶対見逃せない疾患を以下に記します。
発熱+発疹を来す疾患 ・ 劇症型レンサ球菌感染症 ・ Vibrio vulnificus感染症 ・ 劇症型肺炎球菌感染症 ・ 壊死性筋膜炎 ・ ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS) ・ 中毒性表皮壊死剥離症(TEN) ・ Stevens-Johnson症候群 ・ 毒素性ショック症候群(TSS) ・ 血管炎症候群(特に結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡多発血管炎) |
【Step 4】red flagの確認
発熱を伴わない場合の発疹の中にも緊急性の高い疾患はあります。アナフィラキシーが緊急疾患であることが例で、その他にもDIC、血栓性血小板減少性紫斑病など血小板・凝固系の異常を認める疾患も緊急性が高いです。以下にred flagを示します。
発疹のred flag 発熱、幼児・高齢者、免疫抑制状態、リンパ節腫大、ひどい紅皮症、点状出血・紫斑、粘膜・口腔病変、低血圧、局所の疼痛、関節痛、最近の薬剤開始(1~4週)、明らかに重症感がある |
【Step 5】アレルギー性疾患かどうかを考える
アレルギーでは多くは既往があることが多いですが、初回のアレルギーでは症状からまずは疑うことが大切です。
Ⅰ型アレルギー:IgEタイプ。抗原が体内に入るとすぐに生じるため(10-20分)、即時型反応と呼ばれます。
Ⅱ型アレルギー:IgGタイプ。原因物質の摂取から発症までの時間が決まっておらず推定が難しい
Ⅲ型アレルギー:抗原・抗体・補体が互いに結合した免疫複合体による。1-3週間で発症(遅発型反応)
Ⅳ型アレルギー:抗原と特異的に反応するT細胞による。抗原暴露から48-72時間で発症(遅延型)
Ⅴ型アレルギー:自己の細胞に対する抗体産生。バセドウ病など。
【Step 6】薬疹 vs その他
薬疹は入院・外来を問わず、一定の確率で起こり得るcommon diseaseです。多くの場合は浮腫性紅斑や丘疹のパターンをとり非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やテトラサイクリン系、サルファ剤、睡眠薬などでは固定薬疹を認めることから確定診断に至るものもあります。
【Step 7】中毒疹という病名
中毒疹という病名は身体の中に何らかの有害物質が入って反応しているという病態を表しているだけで原因がはっきりしないものや原因がはっきりするまでの一時的な病名としてつけられていることが多いです。
【Step 8】いつも心に内科的な疾患が隠れていないかと考える
発疹は内科疾患を見つけるための非常に重要な情報で、全身性エリテマトーデスの蝶形紅斑、皮膚筋炎のヘリオドロープ疹、全身性アミロイドーシスのamyloid purpura(眼瞼周囲の紫斑)、POEMS症候群に見られる顔面のびまん性色素沈着、血管炎症候群で認めるpalpable purpura(浸潤を触れる紫斑)、糖尿病の浮腫性硬化症や掌蹠膿疱症です。
いかがでしたか。次回は『四肢のしびれ』の勉強を行います。