第92回 末梢血に芽球が出現したら、骨髄生検 ~診断と治療について考えよう~

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 こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。血球貪食症候群伝染性単核球症について一緒に勉強しました。

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 本日は、末梢血に芽球が出現したら、骨髄生検について一緒に勉強していきましょう。

 

勉強前の問題

① 末梢血に芽球が出現したら

② 骨髄生検

 

 本日は血液内科疾患について勉強してみましょう。血液内科疾患は専門性が高く手を出しにくいと考えがちですが、実際どのような疾患を鑑別にあげ、治療を行っていけばよいか考えておく必要があると思います。今回は第八弾として末梢血に芽球が出現したら、骨髄生検について勉強しましょう。

 

92回 末梢血に芽球が出現したら、骨髄生検 ~診断と治療について考えよう~

 

本文内容は主に『レジデントのための血液教室 宮川義隆著』を参考に記載しています。この本はレジデント向けに書かれていますが、なんといっても読みやすいです。血液疾患の勉強の最初のとっかかりにしてみてはいかがでしょう。

レジデントのための血液教室〈ベストティーチャーに教わる全6章〉

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① 末梢血に芽球が出現したら

 芽球出現を認めた場合は急性白血病を疑います。芽球とは未熟な骨髄細胞のことであり、骨髄中の割合は健常人では5%未満ですが、急性白血病では20%以上となります。末梢血に芽球が出現するのは異常事態ですのですぐに急性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、がんの骨髄転移の鑑別診断を速やかに開始します。

・診察のポイント

 急性白血病であれば、貧血症状(労作時の動悸と息切れ、立ちくらみ、全身倦怠感)、出血症状(紫斑、鼻血、口腔内出血、不正性器出血)と感染症による発熱を認めることが多いです。表在リンパ節と脾臓の腫大があれば、急性リンパ性白血病を疑います。

 骨髄線維症は貧血に加えて脾臓腫大による腹部膨満感と食欲低下を認めます。進行例では脾臓が臍部に達し、触診で脾臓の末端を触れず見落とすこともあります。巨大な脾臓はときに梗塞を起こし、発熱と腹痛で診断が付きます。固形癌の骨髄への転移を骨髄癌腫症といいます。原発巣として肺がん、乳がん胃がん、大腸がん、前立腺がんをうたがい、問診と診察を行います。

・検査

 血液検査(百分率)、顕微鏡による末梢血塗抹標本(ギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色)、血液凝固検査、生化学、sIL-2R、骨髄検査(穿刺、生検)。検査会社によっては、芽球は「異常細胞」と記載されることがあります。

・鑑別診断

 芽球のフローサイトメトリーを外注すると、結果判明までに数日かかります。可能であれば院内でペルオキシダーゼ染色を行い、顕微鏡で芽球の形態を観察し、急性骨髄性白血病急性リンパ性白血病を鑑別します。

 骨髄検査で芽球20%以上であれば急性白血病と診断します。前白血病と呼ばれる骨髄異形成症候群(MDS)の芽球は20%未満となります。

 骨髄生検で上皮がんの転移があれば骨髄癌腫症、コラーゲンの増加があれば骨髄線維症と診断します。末梢血中に赤芽球と芽球が出現する状態を白赤芽球症と呼び、骨髄がん腫症と骨髄線維症に特徴的な所見です。急性骨髄性白血病と異なり、急性リンパ性白血病では表在性リンパ節と脾臓の腫大、sIL-2Rが高知を示すことが多いです。

・治療

 急性白血病は化学療法により治療します。再発・難治例は、HLA一致ドナーが見つかれば造血幹細胞移植を検討します。骨髄がん腫症は基礎疾患の治療と支持療法が中心となりますが、予後は不良です。骨髄線維症は輸血による貧血症状の改善と抗がん剤、局所放射線治療により脾臓の縮小効果を期待できます。

 

② 骨髄検査

 骨髄検査は通称「マルク」と呼ばれます。骨髄検査には、骨髄液を吸引して、塗抹標本を作成するための骨髄穿刺病状の骨髄組織を採取するため骨髄生検の2種類があります。骨髄検査は痛いと言われますが上手な医師がすれば痛みはありません。

・骨髄穿刺

 胸骨からの骨髄検査は原則として禁止されており、より安全な腸骨から行います。後腸骨稜の皮下を局所麻酔後、骨膜下を十分に麻酔します。その部位に穿刺針を当てれば痛みはないです。患者がいたがるのはいたがるときは麻酔が足りないか、かかっていない場所を穿刺している場合が高いです。穿刺針が腸骨表面に達した後、約1~2cm針を進めて内筒を抜き、骨髄液を採取します。

 骨髄液を吸引する際に、内臓痛を自覚することが多いです。「少し違和感がありますよ」と声をかけておくことで痛みは軽減します。なと、高齢者は骨が柔らかく、痛みは弱いことが多いです。

 吸引する骨髄液は1mL以下とします。大量に吸引すると末梢血の混入により骨髄液が希釈され、骨髄像(特に芽球率)が不正確になります。例えば、芽球30%で白血病と診断されるべき症例が下手な手技で検体が希釈されると芽球10%の骨髄異形成症候群(MDS)になりかねないです。

・骨髄塗抹標本の作製

 吸引した骨髄液を注射器から速やかにガラス製の時計皿に出します。予め用意したスライド10枚に塗抹し骨髄標本を作成します。塗抹器、冷風(うちわ、ドライヤー)で乾燥させます。欧米では風乾させるため、細胞が縮んで観察されます。

 時計皿に残りの検体を10分以上置くと凝固反応が進みます。完成した血餅をホルマリン溶液に入れ、病理診断部に提出します。血餅標本は骨髄中の細胞密度、細胞の形態などを観察するのに適した標本で、生検検体が採取できないときの代用となります。

・骨髄生検

 骨髄穿刺後、速やかに麻酔をかけた部分を狙って骨髄生検針をすすめます。患者が痛みを訴える場合は麻酔が切れたか、あるいは麻酔が効いていない部分を刺している可能性があります。腸骨稜から1cm針をすすめ、生検針が固定したことを確認後、内筒をぬいて2cm針をすすめます。検体採取用の内筒を入れ、生検針を抜けば検査終了となります。適切な検体の長さは約2cmです。1cm以下では検体が不足する恐れがあります。

 

いかがでしたか。次回は『汎血球減少、好塩基球増多症』の勉強を行います。