第73回 熱症 ~熱傷の重症度分類は?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。熱中症について一緒に勉強しました。
本日は、熱中症と一字違いの熱症について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 熱症
・熱傷深度
・重症度判定基準
・治療
前回は熱中症を勉強しました。熱中症と一字違いの熱傷について勉強しましょう。熱傷はすごく日常的で誰でも軽い熱傷をおったことのあると思います。このことを考えると外来に来る患者さんにも熱傷を負った患者さんが来ることは少なからずあると思います。その時には適切に対応できるように勉強していきましょう。
第73回 熱症 ~熱傷の重症度分類は?~
本文内容は主に『季節の救急 山本基佳』を参考に記載しています。救急医療に関して携わるときもちろん季節を考えまがら診断を決めているのではないかと思います。例えば夏場なら熱中症が多いだとか、冬なら心筋梗塞が増えるかなあなどです。今回は秋ということで秋にまつわる救急疾患を勉強してみましょう。
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① 熱症
熱症は適切に治療しないと痕が残ります。初療が大切な外傷であるため必ず適切に治療できるようになりましょう。熱傷では熱傷深度・熱傷面積をおさえましょう。
・熱傷深度
熱傷深度は以下のような表に示されているように分類されます。ただし、熱傷深度は経時的に変化するもので初療で確認した深度は変化すると考えておきましょう。
熱傷深度 |
状態 |
Ⅰ度熱傷 |
表皮内に限局した熱傷。発赤のみ。 |
浅達性Ⅱ度熱傷 |
真皮浅層までの熱傷。水疱あり。 |
深達性Ⅱ度熱傷 |
真皮深層までの熱傷。水疱あり。 |
Ⅲ度熱傷 |
皮膚全層に達する熱傷。白色・褐色レザー様。 |
熱傷面積の初期評価方法は国試でもおなじみの9の法則(大人)、5の法則(小児)です。忘れた人は確認をお願いします。HPにはその説明から例題まで取り上げられており勉強しやすいです。勉強してみてください。
熱傷面積HP:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/4464
・熱傷センターの紹介基準
重症熱傷は、その重症度、加療時間、処置に要するコストやマンパワー的な問題、その後のリハビリなどを考慮します。
外傷初期診療ガイドライン-JATEC 重症度を以下に示します。
・重症度判定基準
重度:救命救急センターなど熱傷専門治療が行える施設で入院加療を必要とするもの
Ⅱ度熱傷で熱傷の割合30%以上
Ⅲ度熱傷で熱傷の割合10%以上
顔面、手、足、会陰部、主要関節部の熱傷
気道熱傷またはその疑い
電撃傷(雷撃傷を含む)
化学熱傷
生命に関わる合併損傷のある熱傷
中等度:一般病院で入院加療を必要とするもの
Ⅱ度熱傷で熱傷の割合15~30%
Ⅲ度熱傷で熱傷の割合2~10%
軽症:外来で通院治療可能であるもの
Ⅱ度熱傷で熱傷の割合15%以下
Ⅲ度熱傷で熱傷の割合2%以下
以上の判定基準を参考に熱傷センターへ紹介しましょう。
・治療
冷却
やけど直後は流水で冷却をします。熱を取るだけでなく冷やすと多少の鎮痛にもなります。なお、氷で冷やす必要はありません。熱を取るためには10分も冷やせば十分です。あまり長時間冷やすと低体温にもつながってしまう。
創処置
治療原則は「傷を乾かさないこと」と「傷を消毒しないこと」。一般の創処置と同じです。
軟膏
軟膏を塗ると創面と被覆材がうまくフィットするし、摩擦も減ります。浸出液が多い時には必須ではないですが、塗っておいたほうがよいとのこと。刺激性のないものを用いるのがよいです。具体的にはワセリン軟膏やプラスチベースのような油基材の軟膏が使用しやすいです。
クリーム類は、創面への使用は控えましょう。クリームは水と油の乳化剤であるため界面活性剤を含むので組織を傷害します。ゲーベンクリームも特に疼痛を誘発するため、軽症熱傷には添付文書も禁忌となっています。
被覆材
1,それ自体に粘着力のない被覆材
湿潤治療を行うために各種創傷被覆材があります。それ自体に粘着力のない被覆材として、プラスモイスト類、モイスキンパッド、ハイドロサイト(ポリウレタンフォーム)などがありどれも使用しやすいです。
プラスモイスト類:好きな大きさに切って使え、薄くて柔軟性があり体のどの部位にも貼りやすいです
ハイドロサイト:厚いスポンジ様で、暑い分だけクッションのようになりますが、その反面顔や凹凸のある部分には貼りにくいということがあります。また、浸出液を多く吸うので浸出液の多い傷には使いやすいが、これもその反面浸出液を吸いすぎてしまい創面を乾かしてしまうことがある。
ラップ、フィルム材:湿潤治療になれている人は創面にラップやフィルム剤を当て、その上に湿潤液を吸うための被覆材(ガーゼ、シート、オムツ類など)を被せる方法ととってもいいです。
2,それ自体に粘着力のある創傷被覆材
薄めのヒドロコロイド製剤であるデュオアクティブETが代表的です。デュオアクティブCGFはやや厚めで使いにくいので熱傷治療には向きません。ハイドロコロイド製剤はそれ自体に粘着力があり、好きな大きさに切って貼ることができます。凹凸のあるところにも馴染むので顔や指先などにも使いやすいです。
水疱
水疱は破るという意見と、破らないという意見の2つに別れます。破るという意見の人は、水疱膜は細胞の死んだ膜で基本的には異物という考えであるからです。逆に破かないという意見の人もいます。破かない人は水疱内の浸出液が天然の被覆材になると考えるとのこと。また破かなければ無菌状態を保てると考えますが、実際には水疱を破かなくても感染を起こした事例もありますので必ずしも当てはまらないと考えておきましょう。
Ⅰ度熱傷に対する処置
Ⅰ度は発赤だけであり、基本的にはワセリン軟膏塗布+プラスモイスト類がいいです。ハイドロサイと必要とするようなほどの滲出液は産生しないと考えられますので基本的には使用しません。他にはハイドロコロイド製剤を使用してもいいです。ただし熱傷がⅡ度に移行した場合は製剤をはがすときに一緒に水疱膜が破れることがありますので患者に説明が必要です。
Ⅱ度熱傷に対する処置
Ⅱ度つまり水疱を伴う熱傷では水疱をつぶした場合には表皮がなくなるので被覆剤が必要です。ワセリン塗布+プラスモイスト貼付がわかりやすい処置です。滲出液が多い場合はハイドロコロイド製剤も適応になります。
(参考)熱傷の治療について
広範囲Ⅲ度熱傷の感染予防目的にはスルファジアジン銀クリーム(ゲーベンクリーム)、小範囲Ⅲ度熱傷の壊死組織除去目的にはブロメライン軟膏、ソルコセリル軟膏が推奨されます。Ⅱ度熱傷に対しては湿潤環境維持を目的にワセリン軟膏基剤を基本とし、熱傷の広さや深さにより主剤(抗菌薬、ステロイドなど)を選択します。Ⅱ度熱傷ではbFGF(フィブラストスプレー)を併用してもよいでしょう。各種創傷被覆材を用いてもよいですが、密閉による感染に注意し、適宜交換をして医師とともに創部を観察しましょう。皮膚のバリアがないため、容易に菌血症となり重症化するリスクがあります。
30%TBSA以上の広範囲熱傷では、受傷後早期(2週間以内)に壊死組織を除去して創閉鎖を行う「早期手術」が推奨されます。出血量の増加などの懸念もありますが、早期に創を閉鎖することで浸出液の減少や機能予後の改善、感染リスクの低下などが期待されます。
(参照:エマージェンシー・ケア 31(1): 63-69, 2018.)
いかがでしたか。次回は『肺塞栓』の勉強を行います。