第79回 NTIS (non-thyroidal illness syndrome)~NTISの対処法は?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回はDKA・HHSについて一緒に勉強しました。
本日は、NTISについて一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① NTIS (non-thyroidal illness syndrome)
1,甲状腺の生理学
2,重症患者の甲状腺機能
3,重症疾患と成長ホルモン
甲状腺疾患を基礎に持っている患者さんはかなりの数がいらっしゃいますね。実際にチラージンを内服している患者さんや、チアマゾール・プロピルチオウラシルを飲まれている患者さんもたくさんいらっしゃいますね。今回NTISについてです。どのように治療したらよいか一緒に勉強していきましょう。
第79回 NTIS (non-thyroidal illness syndrome)~NTISの対処法は?~
本文内容は主に『Dr竜馬のやさしくわかる集中治療 内分泌・消化器編』を参考に記載しています。田中竜馬先生の教科書は非常に読みやすく明快な本が多くいつも出版されるとすぐに手を付けてしまします。救急医療やICU管理の教科書がたくさん出ていますので是非読んでみてください。
Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 内分泌・消化器編〜内科疾患の重症化対応に自信がつく!
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① NTIS (non-thyroidal illness syndrome)
1,甲状腺の生理学
甲状腺ホルモンの作用
体中のほとんどの臓器に甲状腺ホルモンが作用するのですがそのうち代表的なものを以下に示します。
・代謝;甲状腺機能亢進症では酸素消費量は増え、体温は上昇し、異化を亢進させる
甲状腺機能亢進症で近位筋の筋力低下が起こるのは筋肉の蛋白異化によると考えられる
・心臓;β1受容体を増やし、甲状腺機能亢進症では頻脈となる
・呼吸;甲状腺ホルモンの働きによって、低酸素血症や高二酸化炭素血症に対する換気応答が保たれる。
甲状腺機能低下症では肺胞低換気が起こりPaCO2が上昇する
・消化管;甲状腺機能亢進症では排便の回数が増加する
2,重症患者の甲状腺機能
Non-thyroidal illness syndrome(NTIS)とは
甲状腺疾患がないにもかかわらず甲状腺機能に異常が出るような状態をNon-thyroidal illness syndrome(NTIS)と呼びます。Euthyroid sick syndrome とかlow T3 syndromeというのも同じものです。典型的な甲状腺機能低下症の症状は出ません。重症疾患による甲状腺機能検査値の異常は死亡率とも相関しています。
NTISの機序ははっきりとはわかっていませんが、結果として脱ヨード酵素機能の変化がありrT3>T3となります。これがNTISの特徴と言われます。
NTISの治療は以前T4補充の有り無しに対してRCT試験を行われたのですが補充しても死亡率に改善はありませんでした。ですので、甲状腺ホルモンの補充はしないという流れになっています。
甲状腺ホルモンの検査は、治療法がないのであればルーチンに行う必要はなく、もともと甲状腺疾患があるのを疑う場合に限り甲状腺機能検査を行ったほうがよいと言えます。
3,重症疾患と成長ホルモン
成長ホルモンには蛋白の同化を促す作用があり、成長ホルモンを投与すると窒素バランス(蛋白代謝の指標)が改善することがそれまでの研究で示されていました。そこで異化による筋肉の喪失を防ぎたい重症患者を対象にRCTが行われました。しかし成長ホルモンを投与した群では死亡率が有意に高いという結果が出ています。そのため、重症患者に成長ホルモンは使用しないようになっています。
いかがでしたか。次回は『粘液水腫』の勉強を行います。