第67回 食餌性腸閉塞、餅による窒息 ~食事にまつわる疾患~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。ぎんなん中毒、サバアレルギーについて一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日は、食餌性腸閉塞、餅による窒息について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 食餌性腸閉塞

 ② 餅による窒息

前回はぎんなん中毒、サバアレルギーについて勉強しました。本日も食事にまつわる救急疾患つながりで、食餌性腸閉塞、餅による窒息について対応方法を勉強しましょう。なかなかこのような疾患に合うこともないかもしれませんが、身近で起こりうることも想定できますね。勉強していきましょう。

 

67回 食餌性腸閉塞、餅による窒息 ~食事にまつわる疾患~

 

本文内容は主に『季節の救急 山本基佳』を参考に記載しています。救急医療に関して携わるときもちろん季節を考えまがら診断を決めているのではないかと思います。例えば夏場なら熱中症が多いだとか、冬なら心筋梗塞が増えるなどです。非常に良い本なので勉強してみください。

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① 食餌性腸閉塞

 腸閉塞とイレウスという用語には明確な使い分けがあります。腸閉塞の三大要因と言えば、癒着、癌、ヘルニアです。食餌性腸閉塞の原因は、食べ物、食習慣、体質などに分けられます。原因食物には、柿、餅、海藻があります。

 腸管の内腔が詰まることが原因の腸閉塞の中で日常診療で遭遇することが多いのは、糞便性腸閉塞です。高度の便秘などでかちかちに固くなった便がつまり、それよりも口側の便の排泄を妨げます。摘便をして、堅い便をとると、奥からものすごい量の泥状便が流れだしてくることがあります。糞便性腸閉塞のほかには、食餌性腸閉塞、胆石性腸閉塞、寄生虫による腸閉塞/イレウスがあります。

食餌性腸閉塞

 人体は体のいたるところに石ができます。胆嚢にできる胆石、尿路系にできる尿路結石などが有名です。そして胃にも石ができることがあり、これは胃石と呼ばれます。日本では約70%が柿胃石です。

そのほかに胃石の原因として、毛髪、薬剤(アスピリン腸腰剤、徐放剤カプセル(ニフェジピン、テオフィリン)、スクラルファートなど)、無気物(セメント、発泡スチロールなど)。

食餌性腸閉塞の頻度

 頻度は報告によって0.3~5%程度と幅があるが、全イレウスの中で約1%というものが多いです。この全イレウスの中には腸閉塞も含まれます。開腹歴のない腸閉塞/イレウスに限定すると頻度は約11%と相当程度高いです

食餌性腸閉塞の原因

 柿による腸閉塞食べてから長時間経過してから発症することも多いです。数日どころか数か月要することがあります。次に食習慣についてですが、よく噛まないと腸閉塞を起こしやすくなるというのは想像に難くありません。早食い、丸のみの習慣がある人、義歯使用者、齲歯、高齢、認知症精神疾患などがリスク因子です。体質としては消化不良や腸管狭窄があれば腸閉塞が起こしやすいです。食餌性腸閉塞の好発部位は回腸末端で、理由として回腸末端の内腔が狭いこと、蠕動が弱いこと、回盲弁による食餌の提帯が起こることが挙げられます。

食餌性腸閉塞の診断

 食餌性腸閉塞は、術前診断率が約15%と極めて低いです。食餌性腸閉塞は単純腸閉塞の中でも強い症状を来すことがあります。紋扼性腸閉塞として開腹されて、術中・術後に食餌性だと診断されることも少なくないです。

 CT上では、一般の腸閉塞と同様、腸管確拡張や腸液の貯留のほか、胃石や昆布など空気を含むものはスポンジ状低吸収を呈することが知られています。これは典型的なCT像でbubbly mass and impactionと呼ばれます。    

bubbly mass and impaction  https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/26648

 餅は高吸収を呈し、種子は辺縁が高吸収を内部が低吸収を呈します。なお、餅による食餌性腸閉塞は、ほかの食べ物による食餌性腸閉塞とは異なる特徴があるため、次の項で取り上げます。

腸閉塞治療

 救急外来では、全身状態の安定化とともに外科手術、特に緊急手術の必要性について迅速かつ的確に検討します。腸閉塞/イレウスでは血管内脱水を伴うことが多いです。十分な補液、電解質異常の補精を行い、必要に応じて胃管、イレウス管による減圧を試みます。

 食餌性腸閉塞の場合、外科的治療が選択されることが多いです。その場合は、腸管切除による異物の摘出、用手的に異物を肛門側にこし出して誘導する方法または腸切除などが行われます。

コーラを用いた柿胃石の溶解療法

 コーラの飲用、胃管やイレウス管からの注入で柿胃石を溶解させて、腸閉塞を解除するという方法です。1日の投与量は500~3000mL、注入期間も1~7日間と様々です。

 

② 餅による窒息

毎年お正月前後には餅による窒息が起きています、窒息した時のチョークサインは万国共通です。本人に意識があって窒息していることが分かったら素早く腹部突き上げ法を行います。餅は冷えると固くなる性質があるため、カチカチに硬化して食餌性腸閉塞の原因になることが有名である。

 人は窒息すると喉に手を当てます。これは窒息を表すサインでチョークサインと呼ばれます。重度の気道閉塞がいつまでも解除されないと、意識レベルは低下し最終的には心肺停止が起こります。

 治療は軽度の気道閉塞の場合は通常は自分で何とかしようとまずせき込みます。重度の場合には腹部突き上げ法(ハイムリック法)を試みます。ハイムリック法については動画を参考してみてください。

 ハイムリック法:


Let's BLS (Basic Life Support)~ 一 次 救 命 処 置 ~異物除去

 意識障害・心肺停止になったら、腹部突き上げ法を中止して、傷病者を床に寝かせ頬骨圧迫から心肺蘇生を開始します。そして気道確保、人工呼吸のたびに傷病者の口を開けて異物を探します。異物がわからない場合は、そのまま心肺蘇生を続けます。胸骨圧迫は腹部突き上げ法と同じような圧を加えることができると言われており、異物を輩出できる可能性があるとのこと。

 

いかがでしたか。次回は『破傷風』の勉強を行います。