第66回 ぎんなん中毒、サバアレルギー ~秋の疾患~

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 こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。コンサルトのTIpsについて一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 

本日は、ぎんなん中毒、サバアレルギーについて一緒に勉強していきましょう。

 勉強前の問題

 ① ぎんなん中毒

 【症状・身体所見】

 【発症機序】

 【中毒量】

 【検査】

 【治療】

 ② 真のサバアレルギー

 ③ 偽のサバアレルギー

今日は秋ということもあり季節の救急について勉強したいと思いテーマを取り上げました。なかなか、ぎんなん中毒とサバアレルギーについては勉強する期会もないと思います。一緒に勉強してみましょう。

 

66回 ぎんなん中毒、サバアレルギー ~秋の疾患~

 

本文内容は主に『季節の救急 山本基佳』を参考に記載しています。救急医療に関して携わるときもちろん季節を考えまがら診断を決めているのではないかと思います。例えば夏場なら熱中症が多いだとか、冬なら心筋梗塞が増えるかなあなどです。今回は秋ということで秋にまつわる救急疾患を勉強してみましょう。

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① ぎんなん中毒

 ぎんなんの外被は接触性皮膚炎を起こします。ぎんなん中毒を起こすのは、小児が多いですが、成人でも報告はあります。典型的には数分間の強直性間代性痙攣が反復します。嘔吐したら吐物に未消化のぎんなんがないか確認しましょう。

 ぎんなん中毒は予後良好で後遺症は残らないです。ただし死亡例の報告もあります。中毒の原因物質は4’-Oメチルピリドキシン(MPN)で、これがビタミンB6を阻害して中毒症状を起こします。摂取量だけで重症度を判断するのは困難とのこと。成人の場合はビタミンB6欠乏状態を来しやすい基礎疾患を持つ人に注意します

【症状・身体所見】

 発症年齢は、ほとんどが小児であり、特に5歳以下の小児が6~7割を占めます。小児で感受性が高いですが成人でも見られます。主な症状は痙攣で、摂取後1~12時間後に突然、強直性間代性痙攣が出現します。痙攣は数分で消失しますが反復することが多いです。間欠期には意識清明であることが多い。最後の痙攣から1日経ていれば回復したとみていいとのこと。

【発症機序】

 ビタミンB6欠乏症で、原因物質が4’-Oメチルピリドキシン(MPN)でこればビタミンB6に構造が似ておりビタミンB6を阻害します。

【中毒量】

 中毒量ははっきりとわかっていません。発症例を見ると20-30個程度の摂取で発症することが多いですが、10個未満でも発症することがあります。年齢、体格、体調、栄養状態、消化管吸収のされやすさなど、いろいろな因子が関係していると考えられます。

【検査】

 ぎんなん中毒に特異的な検査はありません。ぎんなん接種歴が分かれば診断は容易ですがそもそもこの問診ができるかどうかが診断の分かれ道です。救急外来ではぎんなん中毒診断のための有用な検査がないとはいえ無熱性痙攣の原因検索として、低血糖てんかん、脳腫瘍、髄膜脳炎などほかの一般的な鑑別疾患の検討は言うまでもなく必要です。

【治療】

 治療は痙攣に対するジアゼパム投与

 痙攣発症予防にリン酸ピリドキサール(PLP) 8mg/kgの静注が有効とされています。

 

② 真のサバアレルギー

 サバアレルギーには真のアレルギーと偽のアレルギーがあります。皆さんも聞いたことがあると思いますが一度鑑別の方法も考えてみましょう。

 真のサバアレルギーとはサバ肉中に含まれるたんぱく質などにアレルギーを持っているということです。主なアレルゲンとして、パルブアルブミンが知られています。このパルブアルブミンはサバだけに存在するのではなくほかの魚にもアレルギーが認められます。ですので、アレルギーはサバだけですかと聞いたときそれだけですっと言った場合はかなり怪しいです。真のアレルギーではアレルギー対応やアナフィラキシー対応をする必要があるのはご存じのとおりです。

 

③ 偽のサバアレルギー

 偽のサバアレルギーの原因は主に3つです。ヒスタミン中毒、アニサキスアレルギー、食品添加物アレルギーです。ヒスタミン中毒はアレルギーというより中毒です。それらしい魚を食べたときに集団でアレルギー症状が出た場合は、ヒスタミン中毒らしいと疑われます。

 ヒスタミン中毒は未治療でも通常は12~48時間程度で回復しますが、症状をとるためにも軽症例にはH1受容体拮抗薬、H2受容体拮抗薬を使用します。H1受容体拮抗薬を使用した場合は必ず車や乗り物での帰宅は避けるよう念を押しましょう

 ちなみにヒスタミン中毒はマグロ、サンマ、イワシなどでも起こります。特に赤い魚に多いとのこと。ただし、偽のアレルギーだと思っていても、必ず皮膚テストを確認してから食べてもらうようにしましょう。

 

④ 大豆アレルギー

 プロポフォールは「大豆アレルギーのある方は使用を控えてください」と製薬会社より説明されています。しかし,FDAからの報告では,精製された純度の高い大豆油に対してアレルギー反応は発生しないとされています。大豆アレルギーの原因として考えられている物質は含まれているタンパク質であり,複数ある原因物質のなかでもGly m4が大豆アレルギーの補助診断として注目されています。このタンパク質への特異的IgE は検査会社で測定することもできます。

 このように,大豆アレルギーは“大豆油”が原因というわけではないのですが,プロポフォールの製造過程で大豆のタンパク質が微量に混入している可能性が皆無とまで言い切れないこと,大豆ではなくプロポフォールに対してのアレルギーも混在しており判断が難しいことから,注意喚起がされています。いくつかの論文で大豆アレルギーにプロポフォールを投与しても安全であるとする報告がありますが,確定となるにはまだ検討が必要と

いう状況です。

(薬事 (0016-5980)61巻4号 Page679-682(2019.03))

 

いかがでしたか。次回は『コンサルトのTips』の勉強を行います。