第58回 リンパ節腫脹 ~首のコロコロが痛いです~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。浮腫について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

本日も症候学で、リンパ節腫脹について一緒に勉強していきましょう。

 

勉強前の問題

 ① リンパ節腫脹

 ② 全身性リンパ節腫脹

 ③ 頚部リンパ節腫脹

 ④ 壊死性リンパ節炎(菊池病)

 ⑤ それ以外の部位のリンパ節腫脹

 ⑥ リンパ節生検

学生時代には授業はあるが、実際に症候学をテストなどで出されることは少ないかと思います。ただ、実際の臨床では症候学から疾患を絞っていく話はすごく面白いと思います。みなさんもテレビで総合診療医といえば問診、身体所見、検査とどんどん疾患を絞っていき最終診断を行うことの面白さを目の当たりにしているかと思います。本日は浮腫についてです。一緒に勉強しましょう。

 

58回 リンパ節腫脹 ~首のコロコロが痛いです~

 

本文内容は主に『内科診断リファレンス 上田剛士著』を参考に記載しています。この本はエビデンスベースで症候学をわかりやすく解説しています。すごく論理的にまとまっており勉強になります。研修医の先生はぜひ手にとってみてください。

 

① リンパ節腫脹

 頭部や腋窩のリンパ節は直径1cm鼠径リンパ節は直径1.5 cmまでは健常者でも触知することがあります。鎖骨上リンパ節や滑車上リンパ節を触知すれば異常です。

滑車上リンパ節は手や前腕に炎症をきたす原因がなければ、全身性リンパ節腫脹を反映していると判断される。

滑車上リンパ節の場所は以下のHP参照(p17)してください。

 リンク:滑車上リンパ節

健常者や非特異的頚部リンパ節腫脹寒邪では滑車上リンパ節腫脹を認めることはないが、関節リウマチ患者、全身性リンパ節腫脹を来す疾患(悪性リンパ腫やサルコイドーシス、伝染性単核球症トキソプラズマ感染症HIV感染症)で滑車上リンパ節腫脹を認めたという報告があります。リンパ節腫脹の1%が悪性疾患が原因と言われます。

 

② 全身性リンパ節腫脹

 悪性リンパ腫結核HIV感染症、梅毒、B型肝縁、ネコひっかき病などを考える。肝脾腫を認める場合悪性リンパ腫/リンパ球性白血病結核伝染性単核球症が多い原因疾患です。

また、薬剤性のリンパ節腫脹も報告されています。

 循環器系薬剤(アテノロール、カプトプリル、ヒドララジン、キニジン

 抗痙攣薬(フェニトイン・カルバマゼピンプリミドン

 アロプリノール

 スリンダク

 金製剤

 

③ 頚部リンパ節腫脹

 リンパ節腫脹の中で最も多い。原因としては周囲組織の炎症に伴う反応性リンパ節腫脹が最も多く、特に圧痛があり発症から2週間以内であればその可能性は高い

前頚リンパ節、後頚リンパ節、耳介前リンパ節、耳介後~後頭リンパ節に分類することは診断を絞るうえで有用とされます。顎下・前頚リンパ節は口腔内~咽喉頭からの炎症を反映し、溶連菌感染の診断に有用とされます。頚部リンパ節に腫脹が目立てば伝染性単核球症を考えます。また、耳介前リンパ節は眼瞼結膜の炎症を反映し、流行性角結膜炎の診断に有用です。後頭リンパ節や後耳介リンパ節腫脹は風疹の診断に有用です。

頭頸部のリンパ節所見:https://www.igaku.co.jp/pdf/resident0812-3.pdf

 除外すべき疾患としては癌の転移、悪性リンパ腫結核性リンパ節炎の3つが重要である。超音波検査にて反応性リンパ節腫脹ならば細長いリンパ節でリンパ節門から広がるリンパ節中央から放射状の血流分布となります。超音波所見での悪性の所見は長径/短径<1.5(丸い)、周辺優位の血流、微小石灰化が挙げられます。

 

④ 壊死性リンパ節炎(菊池病)

 2~3週間の経過で発症する後頚部リンパ節炎で、若年女性に多い。生検で診断されます。77%が女性で70%が30歳未満です。CTでは、周囲への浸潤や均一な造影効果を認めることが多いが、局在する低濃度領域やリング状の造影効果を認めることはすくない。

蝶形紅斑、関節炎、白血球減少・抗核抗体陽性を認めることがあり、その場合はSLEとの鑑別もしくはSLEへの移行が問題となります。SLEとの関連ですが壊死性リンパ節炎の28%がSLEとも言われます。壊死性リンパ節炎はSLEの診断に数年先行して発症することがあります。1~6か月でリンパ節腫脹は無治療で自然軽快します。プレドニゾロンは著効しますが、結核性リンパ節炎や悪性リンパ腫との鑑別に悩む場合は安易に投与しないほうが良いとのことです。

 

⑤ それ以外の部位のリンパ節腫脹

 腋窩リンパ節は4つの、鼠径リンパ節は2つのリンパ節群に分類することは原因の推定に有用である。上腕側に沿ったリンパ節腫脹であれば上肢からの炎症を反映します。大胸筋に沿ったリンパ節腫脹であれば乳癌を示唆します。それ以外には広背筋に沿うものと、腋窩中心分布するリンパ節グループがあります。女性では腋の剃毛処理に伴う皮膚病変の有無も確認すべきです。

 縦隔リンパ節は短径が10 mm以上であれば有意な腫大です。ちなみに上部心膜洞は縦隔リンパ節腫大に間違われやすいので注意しましょう。

上部心膜洞の解説HP https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13529

 腹腔内リンパ節は造影CTで周囲が造影されれば結核均一に造影されれば悪性リンパ腫考えます。臍周囲の皮下結節を見たら腹腔~骨盤腔内悪性腫瘍を疑います。

 

⑥ リンパ節生検

 鼠径部以外で3~4週間以上改善しないリンパ節腫脹はリンパ節生検を検討する必要があります。年齢、全身掻痒感、リンパ節腫脹の部位・大きさ・圧痛・硬さはりパせつ生検する必要があるかの判断に有用です。1年以上の経過は非特異的な原因を示唆し、2週間以内に消退すれば通常感染性を考えます。悪性腫瘍は石の硬さで悪性リンパ腫はゴムの硬さと表現され、炎症性と比較すると硬いです。リンパ節同士が癒着しているmattingは、肉芽腫性疾患や悪性疾患で見られます。

リンパ節生検を考慮する場合

 鎖骨上リンパ節の場合

 病歴、性状から悪性の可能性が強い場合(全身状態が悪い、急速増大、大きさが3 cm以上など)

 全身性リンパ節腫脹があるが、ほかに診断の手がかりとなる所見がない場合

 3~4週間経過しても発熱と頚部リンパ節腫脹が持続する場合

 

⑦ リンパ浮腫の保存的治療

 まず弾性ストッキングによる圧迫療法(complete decongestive treatment:CDT)やリンパマッサージ(manual lymph drainage:MLD)などの保存的治療が第一選択である。しかし,保存的治療は現状を維持する,あるいは進行を食い止めることはできても,劇的な改善は望めない.保存的治療による効果を認めない症例や重症例では,手術療法が必要となります。

(White (2188-1081)6巻1号 Page23-28(2018.05))

 

次回は『腹痛』の勉強を行います。