第53回 抗ウイルス薬 ~抗ウイルス薬使い方がわからない?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。抗真菌薬について一緒に勉強しました。
本日は抗ウイルス薬について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 抗ウイルス薬の作用機序
② 抗ウイルス薬各論
1、アシクロビル(ゾビラックス、ビクロックス) 1V 250 mg
2、ガンシクロビル(デノシン) 1V500 mg
3,オセタミビル(タミフル)
4,ペラミビル(ラピアクタ)
5,バロキサビル(ゾフルーザ)
抗菌薬を使う場面は多く、どの科でも馴染みのある先生方が多いかと思います。ただ、抗真菌薬や、抗ウイルス薬といった薬剤を使い慣れている先生はそれほど多くないかと思います。ここでは、抗ウイルス薬について勉強してみましょう。先に知識を大まかに把握しておくといざ患者さんと対面しても調べて対応しやすいかと思います、
第53回 抗ウイルス薬 ~抗ウイルス薬使い方がわからない?~
本文内容は主に『ICU/CCUの薬の考え方、使い方 大野博司 著』を参考に記載しています。ICU/CCUで使われる薬に関して基礎から実際の使用方法まで細かく書かれています。すごくわかりやすいのでもし、興味があれば手に取ってみてください。
① 抗ウイルス薬の作用機序
1,ウイルス接着・侵入阻害薬
ウイルス膜とヒト細胞膜の融合を阻害する薬剤で、抗HIV薬のエンフュービルタイド(T-20 )があります。
2,ウイルスの脱殻阻害薬
ウイルスゲノムの脱殻を阻害する薬剤で、抗インフルエンザ薬のアマンタジンとリマンタジンがあります。
3,ウイルスゲノムの複製阻害薬
ヌクレオシド類似物質と非ヌクレオシドがあり、ヌクレオシド類似物質としてはアシクロビルやガンシクロビルなどがあります。非ヌクレオシドとしてはホスカルネットがあります。
4,ウイルス成熟阻害薬
ウイルスのプロテアーゼ阻害をする薬剤で、抗HIV薬のプロテアーゼ阻害薬があります。
5、ウイルス放出阻害薬
ノイラミニダーゼ阻害によるウイルス放出を阻害する薬剤で、抗インフルエンザ薬の小瀬多美ビル、ザナミビル、ペラミビルがあります。
② 抗ウイルス薬各論
1、アシクロビル(ゾビラックス、ビクロックス) 1V 250 mg
アシクロビルはウイルスDNA合成を阻害して作用します。作用点はチミジンキナーゼというウイルスにしかない酵素を阻害します。
【スペクトラム】
アシクロビルは、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して抗ウイルス活性があります。アシクロビル点滴静注はヘルペス脳炎と水痘肺炎の場合に用いられます。
【使用方法】
アシクロビル 10~15 mg/kg 8時間毎 14~21日
*50kgの時、ゾビラックス250 mg 2V/生食 100 mLを1時間かけて8時間ごと
・アシクロビルの内服
アシクロビルは半減期が短くバイオアベイラビリティが低いため、内服で投与する場合は1日3~5回内服する必要があります。そのため、バラシクロビル(バルトレックス)とファムシクロビル(ファムビル)はアシクロビルが経口投与では使用されます。
【副作用】
副作用は特に脱水状態や腎不全患者では腎機能悪化(尿細管で結晶形成)があります。点滴静注ではこの結晶形成予防のため60分以上かけて投与します。また、血中濃度が上昇すると中枢神経症状(意識障害、不隠、痙攣など)があります。
アシクロビル脳症、バラシクロビル脳症は腎機能障害や高齢者での帯状疱疹でのアシクロビル点滴やバラシクロビル内服による脳症を見ることがある。この場合は腰椎穿刺や、頭部MRIでは特別の所見なく、血液透析で改善が見込めるとのこと。
腎機能低下時のアシクロビル、バラシクロビルの投与量
アシクロビル:ヘルペス脳炎、重症帯状疱疹での使用時(点滴静注)
投与量 |
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≧50 25~50 10~25 <10ないし血液透析 |
10 mg/kg 8時間毎 5~10 mg/kg 12時間毎 5~10 mg/kg 24時間毎 5 mg/kg 24時間毎 |
バラシクロビル:帯状疱疹での使用時(点滴静注)
投与量 |
|
≧50 25~50 10~25 <10ないし血液透析 |
1000 mg/kg 8時間毎 1000 mg/kg 12時間毎 1000 mg/kg 24時間毎 500 mg/kg 24時間毎 |
2、ガンシクロビル(デノシン) 1V500 mg
サイトメガロウイルス特有のプロテインキナーゼでリン酸化され、DNAポリメラーゼを阻害することでゲノム複製を阻止することで抗ウイルス作用を持ちます。
【スペクトラム】
ガンシクロビルは、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)に活性があります。サイトメガロウイルスに対してはアシクロビルの約10倍の濃度が維持できるため、CMV感染症の第一選択薬です。ガンシクロビル長期投与によりガンシクロビル耐性となったサイトメガロウイルス感染症の場合はホスカルネット(ホスカビル)、シドホビルが使用されます。
【使用方法】
・ガンシクロビル 5mg/kg 12時間毎 14~21日
その後5 mg/kg/日 点滴静注を免疫不全の程度によって継続します。
*50kgの時、デノシン500 mg 1Vを注射用水 20mlに溶かし、10 mgを生食 100 mlと混ぜて1時間かけて点滴静注、12時間毎。
【副作用】
副作用は、骨髄抑制と腎機能障害があります。特に好中球減少は25~40%に見られ中止ないしはG-CSFが必要になります。そのためガンシクロビル投与開始後は2~3回/週での血液検査フォローが必要です。また、中枢神経症状として頭痛、幻覚、振戦、痙攣が10~15%でみられます。
腎機能低下時のガンシクロビル、バルガンシクロビルの投与量
アシクロビル:ヘルペス脳炎、重症帯状疱疹での使用時(点滴静注)
投与量 |
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≧80 50~79 25~49 10~24 <10ないし血液透析 |
5 mg/kg 12時間毎 2.5 mg/kg 12時間毎 2.5 mg/kg 24時間毎 1.25 mg/kg 24時間毎 1.25 mg/kg 3回/週 |
バラシクロビル:帯状疱疹での使用時(点滴静注)
投与量 |
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>60 40~59 25~39 10~24 <10ないし血液透析 |
900 mg/kg 2回/日 450 mg/kg 2回/日 450 mg/kg 1回/日 450 mg/kg 2~3回/週 推奨せず |
3,オセタミビル(タミフル)
ノイラミニダーゼ阻害薬に分類され、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)を選択的に阻害して、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの脱出・放出を阻害することで抗ウイルス作用を発揮します。
【スペクトラム】
オセタミビルはインフルエンザA/Bウイルス、新型インフルエンザウイルス(H1N1)、鳥インフルエンザ(H5N1)に対してウイルス活性があります。
腎機能低下時で特にCcr≦30 ml/分なら用量腸性が必要。
【使用方法】
発症36時間以内に服用することでインフルエンザの重症度、罹患期間、呼吸器合併症、入院を減らすことが知られています。
・インフルエンザ治療 オセタミビル 75 mg経口1日2回
・インフルエンザ予防 オセタミビル 75 mg経口1日1回 10~40日程度
また、血液透析患者では治療量も予防両も75mg1回内服でよいといわれています。
【副作用】
下痢、悪心・嘔吐などの消化器症状があります。また頭痛、せん妄、異常行動の報告があります。
4,ペラミビル(ラピアクタ)
ノイラミニダーゼ阻害薬に分類されます。
【スペクトラム】
ペラミビルはインフルエンザA/Bウイルス、新型インフルエンザウイルス(H1N1)に対して抗ウイルス活性があります。特に経口・吸入でのノイラミニダーゼ阻害薬ができない場合に点滴で用いることができます。
【使用方法】
・ペラミビル 300mg/60 mlを15分以上かけて点滴静注 1回/日
重症の場合は増量し、1日1回600mg 15分以上かけて点滴静注 症状軽快するまで投与。
5,バロキサビル(ゾフルーザ)
2018年3月に発売されたバロキサビルは従来のノイラミニダーゼ阻害薬と異なり、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害によりウイルスの増殖を抑制する薬剤です。バロキサビルはA型、B型のどちらのインフルエンザにも有効であることが確認されていますが、臨床試験で効果が確認されているのはH1N1pdm09とA香港(H3N2)です。第Ⅲ相試験結果では約1日の罹患期間の短縮が示されています。小児を対象とした国内第Ⅲ相試験ではバロキサビル投与患者のうち23.3%にアミノ酸変異を認めたとのことであった。アミノ酸変異があったウイルスの増殖能は低下するが、バロキサビルに対する感受性は約50倍低下するとのことです。
【使用方法】
・バロキサビル 20mg錠2錠を単回投与する
腎障害患者に対して投与量の調整の必要はないとのことです。
次回は『NPPV』について勉強をしたいと考えています。