第52回 抗真菌薬 ~抗真菌薬使い方がわからない?~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。抗血小板薬について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日は抗真菌薬について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 抗真菌薬の分類

 ② 抗真菌薬各論

  1,ポリエン系抗真菌薬

  2,アゾール系抗真菌薬

  3,エキノキャンディン系抗真菌薬

  4、フルオロピリミジン系抗真菌薬

 ③ 抗真菌薬の投与量・投与期間

抗菌薬を使う場面は多く、どの科でも馴染みのある先生方が多いかと思います。ただ、抗真菌薬や、抗ウイルス薬といった薬剤を使い慣れている先生はそれほど多くないかと思います。ここでは、抗真菌薬について勉強してみましょう。先に知識を大まかに把握しておくといざ患者さんと対面しても調べて対応しやすいかと思います、

 

52回 抗真菌薬 ~抗真菌薬使い方がわからない?~

 

本文内容は主に『ICU/CCUの薬の考え方、使い方 大野博司 著』を参考に記載しています。ICU/CCUで使われる薬に関して基礎から実際の使用方法まで細かく書かれています。すごくわかりやすいのでもし、興味があれば手に取ってみてください。

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

 

① 抗真菌薬の分類

1,ポリエン系抗真菌薬

 アムホテリシンB、アムホテリシンB脂肪製剤

2,アゾール系抗真菌薬

 1) トリアゾール系:フルコナゾール、イトラコナゾール

 2) 2世代トリアゾール系:ボリコナゾール、ポサコナゾール

3,エキノキャンディン系抗真菌薬

 カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン

4,フルオロピリジン系抗真菌薬

 フルシトシン

 

② 抗真菌薬各論

真菌の分類は大きく3つに別れ、①酵母カンジダ、クリプトコッカス)、②糸状菌[接合菌、アスペルギルス、その他(スケドスポリウム、フサリウム、地域流行型真菌)]、③その他(ニューモシスチス)の3系統です。

酵母

(Yeast)

カンジダ:C. albicans、Non-albicans (C. glabrata, C. krusei, C. parapsilosis, C. lusitaniae, C. tropicalis)

糸状菌

(Mold)

接合菌糸 Zygomycetes

アスペルギルス:A. fumigatus, A. flavus, A. niger, A. nidulans, A. terreus

その他[フサリウム、スケドスポリウム、地域流行型真菌 Endemic fungi(コクシオイデス、ヒストプラズマ、パラコクシオイデス、ペニシウム、ブラストミセス)など]

その他

Pneumocystis jiroveci

・臨床で重要な酵母

 酵母カンジダとクリプトコッカスの2つに分かれます。カンジダの中にはCamdida albicansと非albicansの2つに分類されます。

・臨床で重要な糸状菌

 糸状菌は隔壁の有無によって、隔壁のない接合菌糸(アスペルギルス、フサリウム、スケドスポリウムなど)の2つに分かれます。特に接合菌糸アスペルギルスを中心にまとめてみましょう。

・臨床で重要なその他の真菌

 以前まで原虫に分類されていたPneumocystis jiroveciが重要であり、特に細胞性免疫不全でのニューモシスチス肺炎を起こします。

 日常臨床の現場では、①酵母ならどれをカバーするか、糸状菌ならどれをカバーするかを考えて整理するとよいとのことです。

 

1,ポリエン系抗真菌薬

アムホテリシンB(ファンギゾン)

 侵襲性深部真菌感染症の治療に重要です。殺菌的に作用し、接合菌も含めほぼ全ての真菌をカバーしています。

腎機能障害、電解質障害(低K血症、低Mg血症、尿細管アシドーシス)、投与時の悪寒・血圧低下の副作用が問題となります。副作用を少なくしたアムホテリシンB脂質製剤が開発されました。

アムホテリシンB脂質製剤(アムビゾーム)

 脂質製剤としては、Amphotericin B lipid complex, Amphotericin B colloidal dispersion, Liposomal amphotericin Bがあります。今までのアムホテリシンBと比較して効果は大きな差はありませんが、副作用が少ないというのが特徴です。

【アムホテリシンBの主なスペクトラム

酵母カンジダ(C. lusitaniaeを除く)、クリプトコッカス

糸状菌:アスペルギルス(A. terreusを除く)、接合菌、地域流行型真菌(コクシオイデス、ヒストプラズマ、ブラストミセスなど)

 

2,アゾール系抗真菌薬

フルコナゾール(ジフルカン、プロジフ、ビスカルツ)

 酵母カンジダ(C. krusei, C. glabrataは除く)、クリプトコッカスの治療に重要な抗真菌薬です。優れたバイオアベイラビリティ(90%)があるため状態が安定し次第、経口投与に変更します。副作用としては消化器症状や肝障害があります。

【フルコナゾールの主なスペクトラム

 酵母カンジダ(C. krusei, C. glabrataは除く)、クリプトコッカス

 糸状菌:なし

イトラコナゾール(イトリゾール)

 フルコナゾールよりスペクトラムは広く、糸状菌に効果があります。内服の使い方として、①カプセル剤は胃酸の影響を受けるため食事と一緒に内服[またはコーラなど胃酸pHを下げた状態で内服、胃酸分泌抑制剤(PPI、H2ブロッカー)を併用しないこと]、②内容液は食間投与がポイントです。副作用としては、消化器症状や肝障害、心室不整脈心不全があります。

【イトラコナゾールの主なスペクトラム

 酵母カンジダ

糸状菌:アスペルギルス、地域流行型真菌(コクシオイデス、ヒストプラズマ、ブラストミセス)

ボリコナゾール(ブイフェンド)

 糸状菌のアスペルギルス、そして今まで有効な薬剤のなかったフサリウム、スケドスポリウムなどにもスペクトラムがあります。特に侵襲性アスペルギルス症には第一選択となっています。接合菌には効果がありません。

 バイオアベイラビリティが非常に高く(96%)、早期に静注から内服薬やスイッチできます。副作用としては眼症状(一過性)、消化器症状や肝障害があります。

【ボリコナゾールの主なスペクトラム

 酵母カンジダ、クリプトコッカス

 糸状菌:アスペルギルス、その他(スケドスポリウム、フサリウム)、地域流行型真菌(コクシオイデス、ヒストプラズマ、ブラストミセス)

ポサコナゾール

 ポサコナゾールの欠点を克服するためにできた抗真菌薬で、接合菌まで含めほぼ糸状菌全般をカバーできるようになっています。内服しかないのが弱点ですが、国内未承認です。

【ポサコナゾールの主なスペクトラム

 酵母カンジダ、クリプトコッカス

 糸状菌:接合菌、アスペルギルス、その他(スケドスポリウム、フサリウム)、地域流行型真菌(コクシジオイデス、ヒストプラズマ。ブラストミセス)

 

3,エキノキャンディン系抗真菌薬 

ミカファンギン

 エキノキャンディン系はミカファンギンと国内未承認のカスポファンギン、アニデュラファンギンがあります。カンジダの治療では、特にフルコナゾール耐性カンジダもカバーする必要がある場合の第一選択となる抗真菌薬です。

 静注薬しかないため内服へのスイッチができないこと、ボリコナゾールがアスペルギルスの第一選択であるため、基本的にはカンジダ全般をカバーする抗真菌薬と考えて使用すると考えればよいとのことです。

【ミカファンギンの主なスペクトラム

 酵母カンジダ

 糸状菌:アスペルギルス

 

4、フルオロピリミジン系抗真菌薬

 フルシトシン(アンコチル)

 フルオロシトシンは単剤使用すると短期に耐性菌が発生するため単剤使用してはいけない。使用する場合は他剤と併用することが原則です。副作用としては、骨髄抑制、肝障害があり血中濃度のモニターが必要ですが、国内ではフルオロシトシンの血中濃度が簡易に測れないのが難点です。

【フルオロシトシンの主なスペクトラム

 酵母カンジダ、クリプトコッカス

 糸状菌:なし

 

③ 抗真菌薬の投与量・投与期間

侵襲性カンジダ

抗真菌薬

投与量・投与間隔

投与量調整

ポリエン系:

 アムホテリシンB

 リポソーム型アムホテリシンB

 

0.6~1 mg静注/kg/日

3~5 mg静注/kg/日

 

不要、腎機能フォロー

不要、腎機能フォロー

アゾール系

 フルコナゾール

 ポリコナゾール

400~800 mg/日、内服、静注

 

静注:6mg/kg 12時間毎2回。その後、3~4 mg/kg12時間毎

内服:<40kgで100 mg 12時間毎、≧40kgで200 mg 12時間毎

 

腎不全で調整

肝不全で調整、静注では腎不全でボリコナゾール溶媒が蓄積するため使用できない

エキノキャンディン系

 ミカファンギン

 

100~200 mg静注/日

 

肝不全で調整

 

侵襲性アスペルギルス症

抗真菌薬

投与量・投与間隔

投与量調整

ポリエン系:

 アムホテリシンB

 リポソーム型アムホテリシンB

 

1~1.5 mg静注/kg/日

5 mg静注/kg/日

 

不要、腎機能フォロー

不要、腎機能フォロー

アゾール系

 イトラコナゾール

 

 

 ボリコナゾール

 

静注:200mg 12時間毎4回。その後、200 mg/日

内服:200~400 mg/日

静注:6mg/kg 12時間毎2回。その後、3~4 mg/kg 12時間ごと

内服:<40kgで100 mg 12時間毎、≧40kgで200 mg 12時間毎

 

薬物相互作用多数

腎機能低下時は静注は推奨されない

肝不全で調整、静注では腎不全でボリコナゾール溶媒が蓄積するため使用できない

エキノキャンディン系

 ミカファンギン

 

100~200 mg静注/日

 

肝不全で調整。第一選択ではない。

 

接合菌感染症

抗真菌薬

投与量・投与間隔

投与量調整

ポリエン系:

 アムホテリシンB

 リポソーム型アムホテリシンB

 

1~1.5 mg静注/kg/日

≧5 mg静注/kg/日

 

不要、腎機能フォロー

不要、腎機能フォロー

 

次回は『抗ウイルス薬』について勉強をしたいと考えています。