第51回 抗血小板薬 ~この抗血小板薬はなんで使用してるの?~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。CHDF(第二章 CHDF)について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日は抗血小板薬について一緒に勉強していきましょう。

 勉強前の問題

 ① 止血のメカニズムの確認

 ② 国内で使用可能な抗血小板薬

 ③ 抗血小板薬各論

  1,シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬

  2,ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬

  3,アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬

  4,GPⅡb-Ⅲa拮抗薬

  5,その他

抗血小板薬を使用している患者さんに接しない先生はいないかと思います。ただ血小板薬も非常に種類が多く、また、管理はどのようにしたらよいかということに自身がない先生も多いかと思います。では一緒に勉強していきましょう。

 

51回 抗血小板薬 ~この抗血小板薬はなんで使用してるの?~

 

本文内容は主に『ICU/CCUの薬の考え方、使い方 大野博司 著』を参考に記載しています。ICU/CCUで使われる薬に関して基礎から実際の使用方法まで細かく書かれています。すごくわかりやすいのでもし、興味があれば手に取ってみてください。

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2

 

 ① 止血のメカニズムの確認

 一次止血は主役が血小板です。血管損傷に対する即時的かつ一時的反応で、血小板とvon Willebrand因子(vWF)が相互作用して血管収縮が起こって血流を制限します。

 二次止血の主役は凝固因子です。特にⅦ、Ⅹ、Ⅴ、Ⅱが重要で、フィブリン塊を形成します。血液凝固により血管外の組織因子が第Ⅶ・Ⅹ因子とプロトロンビンに暴露されて活性化されます。その後、第Ⅴ、Ⅷ、Ⅸ、Ⅷ因子の活性化を通じて持続的にトロンビンが生成されフィブリノーゲンがフィブリンに変換されフィブリン塊となる。

 

② 国内で使用可能な抗血小板薬

薬剤

作用機序

作用発現までの時間

作用の半減期

中止して効果消失までの時間

アラキドン酸代謝障害

アスピリン
(バイアスピリンバファリン

COX阻害

20~40分(バファリン
4時間(バイアスピリン

3~5日(バファリン、バイアスピリンともに)

5~7日

オザグレル
(キサンボン、オザグレル)

TxA2合成酵素阻害

投与直後

0.7時間

3時間

チエノピリジン

チクロピジン
(パナルジン)

ADP受容体阻害

24~48時間

3~5日

7~10日(2剤併用では14日前)

クロピドグレル
(プラビックス)

ローディングすると6時間

3~5日

5~7日(2剤併用では10日前)

血小板ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害

シロスタゾール
(プレタール)

PDE阻害(血管内皮、血管平滑筋細胞のPDE阻害も含む)

2~3時間

12~24時間

3~5日(2剤併用では7日前)

ジピリダモール
(ペルサンチン)

PDE阻害

1~2日

その他

サルポグレラート
(アンプラーグ)

セロトニン受容体阻害

1~2時間

4~6時間

1日

ベラプロスト
(ドルナー)

PGI2受容体刺激

1時間

8時間

1日

イコサペント酸
(エパデール)

TxA2合成抑制

 

28時間

7~10日

 

③ 抗血小板薬各論

1,シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬

 アスピリン(バイアスピリンバファリン)、オザグレル(キサンボン、オザグレル)

 血管内皮障害が起こり、血小板と血管内皮が活性化されると血小板表面の細胞膜リン脂質からアラキドン酸放出が起こります。アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)によって、プロスタグランジンG2が産生され、その後、トロンボキサンA2 (TxA2)が血小板凝集と血小板顆粒放出反応に重要な役割があり、さらに局所の血管収縮作用もあります。つまりTxA2が強力な血小板活性化物質です。一方でプロスタサイクリンは局所の血管拡張作用があります。

 アスピリンはCOX阻害によりプロスタグランジンG2阻害をするので、血小板の寿命である7~10日は効果が持続することになります。また、抗血小板作用は抗炎症作用よりも低用量で発揮します。抗血小板作用の時は81~150 mg 1回/日で使用できます。

 また、国内で多く使用されているバイアスピリンは腸溶錠であり吸収が遅延するため、急性冠症候群で急速に効かせる場合は200~300 mgを噛んで内服してもらいます。

 副作用としては、出血、消化器症状(悪心・嘔吐、腹痛など)があります。また重篤な副作用としては胃・十二指腸潰瘍に消化管出血、喘息悪化があります。

 脳血栓治療薬として使用されているオザグレルは、点滴静注によりトロンボキサンA2合成酵素を選択的に阻害することで血栓形成進行を阻止します。とくに微小血管梗塞であるラクナ梗塞が良い適応となります。

 抗血小板薬のアスピリンを使用して動脈硬化に対して理解されていることは以下のとおりです。

 1,アスピリンは、将来の心筋梗塞脳梗塞、心血管死亡などの血栓イベントの発症を25%予防します

 2,アスピリン内服で脳出血など重篤な出血イベントは年間0.2%起こります

 3,心筋梗塞、脳血管障害の既往があるケースでの血栓イベントの発症率が4%/年ですが、特に心筋梗塞、脳血管障害の既往のないケースでの決戦イベント発症率は1%/年です。

【使用方法】

バファリンアスピリン) 81 mg 1~2錠1回/日

・バイアスピリンアスピリン腸溶錠) 100 mg 1~2錠1回/日

 

2,ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬

    シロスタゾール(プレタール)、ジピリダモール(ペルサンチン)

 血小板内サイクリックAMP(cAMP)の上昇が血小板凝集を抑制する。特に血小板表面でのTxA2の刺激と血小板表面でのTxA2の刺激と血小板表面でのPGI2受容体の刺激でcAMP上昇することがわかっています。

 血小板ホスホジエステラーゼ阻害薬は、血小板内cAMP分解を阻害することでcAMP濃度を高め、血小板凝集抑制効果を持続させます。

 これらの血小板ホスホジエステラーゼ阻害薬の抗血小板効果は本来弱く、他の抗血小板薬と併用されることが多いです。また、血管拡張作用もあり冠動脈、末梢動脈の拡張を起こします。

 シロスタゾールは慢性動脈閉塞症/末梢動脈疾患による潰瘍、疼痛など虚血性症状の改善、脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)後の再発予防で使用されます。

【使用方法】

・プレタール(シロスタゾール) 1回100 mg 2回/日

・ペルサンチン(ジピリダモール) 25 mg 1回25 mg 3回/日:狭心症心筋梗塞

・ペルサンチン(ジピリダモール) 100 mg 1回100 mg 3~4回/日:弁置換術後血栓・塞栓予防

 

3,アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬 

    チクロピジン(パナルジン)、クロピドグレル(プラビックス)

 チクロピジンとクロピドグレルはチエノピリジン系に分類されます。不可逆的に血小板表面のADP受容体(P2Y受容体ともいう)を遮断します。

 クロピドグレルは虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制と、冠動脈インターベンションを行った急性冠症候群(不安定狭心症、ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞)(アスピリンと併用)で用いられます。

 副作用としては、出血が問題になります。またチエノピリジン系ならではの副作用としては、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、顆粒球減少症、肝機能障害などがあります。

【使用方法】

・パナルジン(チクロピジン) 100 mg 2~3錠 2~3回/日

・プラビックス(クロピドグレル)75 mg 1錠 1回/日

*クロピドグレルをローディングする場合は75 mg 4錠 1回内服

 

4,GPⅡb-Ⅲa拮抗薬

 こちらは非常に強い抗血小板薬ですが、日本では認可されていないため割愛しますが、少しだけ。

糖蛋白GPⅡb-Ⅲa拮抗薬は強ろくな抗血小板薬で、血小板凝集の最後の経路を阻害して作用します。欧米ではPCIで使用され、再狭窄、心筋梗塞の再発などの虚血性心疾患の発生を予防します。アスピリン、ヘパリン、クロピドグレルと併用されます。また、急性冠症候群の治療にも用いられます。

 

5,その他

 その他の抗血小板薬として血小板凝集により放出されるセロトニン受容体を遮断するサルポグラート(アンプラーグ)があり、血小板凝集抑制作用、血管収縮抑制作用を持ちますが単剤では効果が弱いです。

 プロスタサイクリン受容体に作用し、血小板内cAMP上昇により血小板凝集抑制作用を起こすベラプロスト(ドルナー)があります。

 イコサペント酸(エパデール)はエイコサペンタエン酸(EPA)であり、最終的にTxA2生成を低下することで抗血小板作用を持ちます。

 

次回は『抗真菌薬』について勉強をしたいと考えています。