第46回 動脈血液ガス分析の結果の解釈 ~血液ガス分析の結果放置しないで~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。ステロイドの使用方法について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

本日は動脈血液ガス分析の結果の解釈について一緒に勉強していきましょう。

 勉強前の問題

 ① 動脈血液ガスを読む手順

  1) 病態の予測

  2) pHでアシデミアかアルカレミアか判断

  3) pH変化の原因

  4) アニオンギャップ(AG)

 ② AGの正常値とAlb

 ③ AG開大性の代謝性アシドーシスはKUSSMAL-Pで鑑別

 ④ 代償性変化

  1) AGが開大している場合は補正HCO3-を用いる

  2) 代償性変化は適切か

 呼吸困難を主訴に病院を受診された患者さんに動脈血ガスを測定することは多いかと思います。その場合に酸素化の値だけみて、そのまま動脈血ガスのデータは放置という方も多いのではないでしょうか。実際には血ガスのデータに多くの情報が含まれています。動脈血ガスの解釈について一緒に勉強しましょう。

 

46回 動脈血液ガス分析の結果の解釈 ~血液ガス分析の結果放置しないで~

 

本文内容は主に『内科レジデントの鉄則(聖路加国際病院 編)』を参考に記載しています。病棟管理の基礎が書かれており研修医必携の教科書だと思います。ご一読を。

内科レジデントの鉄則 第3版

内科レジデントの鉄則 第3版

 

 

同じ動脈血液ガスの解釈は毎回同じ手順に沿って行いましょう。

①動脈血液ガスを読む手順

1) 病態の予測

 同じ動脈血ガスの結果でも臨床状況が変われば解釈が変わるため、典型的な酸塩基平衡異常をきたす病態を知っておく。中には酸塩基平衡異常を同時にきたす病態もあります。

2) pHでアシデミアかアルカレミアか判断

 pHでアシデミアか、アルカレミアかを判断します。7.35以下ならアシデミア、7.45以上ならアルカレミアと判断しましょう。

3) pH変化の原因

 アシデミアかアルカレミアかを判断したら、PaCO2とHCO3-をみてpHの変化が呼吸性か代謝性かを判断します。この判断はすごく簡単で、PaCO2が40 mmHg以上なら二酸化炭素が溜まっているので呼吸性アシドーシス。以下なら二酸化炭素が減っているので呼吸性アルカローシス。HCO3-が24 mmol/L以上ならHCO3-というアルカリ物質が溜まっているので代謝性アルカローシス。以下なら代謝性アシドーシスです。

 アルカレミアとなっている場合は、呼吸性もしくは代謝性のどちらがアルカローシスになっているかで、呼吸性、代謝性アルカローシスの判断ができます。もう一方は代償的にアシドーシスとなっていることが多いです。

4) アニオンギャップ(AG

 アニオンギャップとは測定できない陽イオンと陰イオンとの差を言います。

AG=測定されない陰イオン(UA)-測定されない陽イオン(UC)

   =[Na+]-([Cl-]+[HCO3-])=12 mEq/L (±2 mEq/L)

AG

UC(測定されない陽イオン

UA(測定されない陰イオン)

>12開大性

低γグロブリン、低K、Ca、Mg血症

KUSSMAL-P

<12低下

高γグロブリン、高K、Ca、Mg血症、Li中毒

低Alb血症

 

② AGの正常値とAlb

 AGの正常値は12±2 mEq/Lだが、測定されない陰イオンのうち変動が起きやすいものとしてAlbがあります。Albが低下するとAGが下がります。そこで以下の補正式が用いられます。

 AG正常値=12-2.5✕(4-Alb)

 

③ AG開大性の代謝性アシドーシスはKUSSMAL-Pで鑑別

 K : ketoacidosis (ケトアシドーシス)

 U : uremia (尿毒症)

 S : salicylic acid (サリチル酸)

 S : sepsis (敗血症)

 M : methanol (メタノール)

 A : alcoholic、aspirin intoxication (アルコール中毒アスピリン中毒)

 L : lactic acidosis (乳酸アシドーシス)

 P : paraldehyde (パラアルデヒド)

 

④ 代償性変化

1) AGが開大している場合は補正HCO3-を用いる。

AGが開大している場合は補正HCO3-を考えないと病態を見落とすことがあります。通常体内ではAG増加分はHCO3-を減少させて、釣り合うように自動的に調節しています。

補正HCO3-=ΔAG+実測HCO3-

これが<24 mEq/LならAG非開大性代謝性アシドーシス、>26 mEq/L奈良代謝性アルカローシスを考えます。

例) Na 135, Cl 95, HCO3- 16, Alb 4

 AG=135-(95+16)=24。ΔAG=24-12=12

 補正HCO3-=ΔAG+HCO3-=12+16=28 >26 mEq/L

 

2) 代償性変化は適切か

 いろいろな予測式がありますが、なかなか覚えきれるものではありません。

 例えば:http://himeji.jrc.or.jp/category/diagnosis/naika/pdf/2015/20150716.pdf

     http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/picu/ion/ion-c.html

 なかなか覚えれませんね。ですので、内科レジデントの鉄則で簡単に覚えてしまいましょう。

 

『そこで、代償性変化は代謝性では15、呼吸性では0.1, 0.2, (0.3だけなくて)0.4, 0.5で計算して判断』と覚えましょう。わかりやすいですね。代謝性は「だいご(代15)」とおぼえましょう。「呼吸性は12345」とおぼえましょう。

一次性変化

予測される代償性変化

代償の限界

代謝性アシドーシス

PaCO2=HCO3-15

PaCO2=15 mmHg

代謝性アルカローシス

PaCO2=HCO3-15

PaCO2=15 mmHg

呼吸性アシドーシス(急性)

ΔHCO3-=0.1✕ΔPaCO2

HCO3-=38 mmHg

呼吸性アルカローシス(急性)

ΔHCO3-=0.2✕ΔPaCO2

HCO3-=18 mmHg

呼吸性アシドーシス(慢性)

ΔHCO3-=0.4✕ΔPaCO2

HCO3-=45 mmHg

呼吸性アルカローシス(慢性)

ΔHCO3-=0.5✕ΔPaCO2

HCO3-=15 mmHg

 ここまで理解できれば後は例題を解きまくるのみです。Web上で問題がたくさん落ちているかと思いましたが、なかなかいいHPが見つからず書籍の紹介とさせていただきます。

 『竜馬先生の血液ガス白熱講義150分』『帰ってきた 竜馬先生の血液ガス白熱講義22問が2冊』が出ておりすごくわかりやすいです。もしよろしければ一度読んでみてください。

竜馬先生の血液ガス白熱講義150分

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帰ってきた 竜馬先生の血液ガス白熱講義22問

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 いかがだったでしょうか。次回はワルファリンの使用方法について勉強をしたいと考えています。