第45回 ステロイドの使用方法 ~ステロイド使用導入時に注意すべきことは~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。ICUでの筋弛緩薬の使用について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

 本日はステロイドの使用方法について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① ステロイドの種類と用量設定

 ② ステロイドの投与回数や経路

 ③ ステロイドパルス

 ④ ステロイドの開始前のスクリーニング

 ⑤ ステロイドを始めた後の管理

 ステロイドは副作用も多く、導入すると同時に副作用対策を考えたり、また、導入前に感染症の対策をしなければならないなど複雑な部分も多いですね。本日は実際に導入することを想定し、ステロイドの使用方法について考えられるようにステロイドの使用方法について一緒に勉強していきましょう。

 

45回 ステロイドの使用方法 ~ステロイド使用導入時に注意すべきことは~

 

本文内容は主に『内科レジデントの鉄則(聖路加国際病院 編)』を参考に記載しています。病棟管理の基礎が書かれており研修医必携の教科書だと思います。ご一読を。

内科レジデントの鉄則 第3版

内科レジデントの鉄則 第3版

 

 

① ステロイドの種類と用量設定

 実臨床で使用するステロイドには様々な力価の薬剤が存在します。力価を間違うとステロイドの量が全く異なります。まずステロイドの種類を確認しましょう。

 ステロイドプレドニゾロンプレドニン)の抗炎症作用を基準にして力価を計算することが多いです。

⼀般名(商品名)

⾎中

半減期

同力価の用量

抗炎症

作用

Na貯留

作用

ヒドロコルチゾン(コートリル)

半日

20 mg

1

1

ヒドロコルチゾン静注(ソル・コーテフ)

20 mg

1

1

プレドニゾロンプレドニン

1日

5 mg

4

0.6

メチルプレドニゾロン(メドロール)

4 mg

5

0.5

メチルプレドニゾロン静注(ソル・メドロール)

4 mg

5

0.5

デキサメタゾン(デカドロン)

2日前後

0.5〜0.75 mg

20~30

0

ベタメタゾン(リンデロン)

0.5〜0.75 mg

20~30

0

 

② ステロイドの投与回数や経路

 ステロイドは1日1回または2~3回の分割投与、隔日投与など様々な方法で投与されます。1日換算の投与量が同等であれば回数が増えれば増えるほど作用が強く、副作用も出やすいと言われています。

(例)プレドニゾロンプレドニン)1日60 mgを1回で投与するよりも20mg1日3回に分割したほうが作用が強く出やすいが副作用も強いです。

 ステロイドはバイオアベイラビリティが高いため、経口と静注が同用量で投与できます。しかし、腸管浮腫や腸炎などで吸収不良が予測される場合には経静脈投与が安全です。

 

③ ステロイドパルス

 日本ではステロイドパルスというとメチルプレドニゾロン1,000 mg/日で投与することが多いです。ステロイドにはgenomic effectとnon genomic effectがあり、genomic effectは100 mg/日で最大効果を発揮するのに比較し、non genomic effectは更に増量しても効果が強くなります。ステロイパルスはこのnon genomic effectを狙ったものです。

 

④ ステロイドの開始前のスクリーニング

 ステロイド投与により発生する副作用の目安は以下のとおりです。

 開始当日から   不眠、うつ、精神高揚、食欲亢進

 数日後から      血圧上昇、Na↑、K↓、浮腫

 2~3週間後から             副腎抑制、血糖上昇、Chol上昇、創傷治療の遷延、ステロイド潰瘍

 1ヶ月後から   紫斑、皮膚線条、ステロイド筋症

 長期的に          無菌性骨壊死、骨粗鬆症、圧迫骨折、白内障緑内障

 ステロイド開始前には結核、肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス感染の既往、ニューモシスチス肺炎感染疑いのためのベースラインのβ-DグルカンとKL-6、高血圧、脂質代謝、糖代謝異常、緑内障白内障をチェックする。

 ステロイドを投与する前にチェックする項目

項目

疾患

T-スポットTB

結核

ツベルクリン反応

結核。日本ではBCG摂取をしているので判定には留意する

サイトメガロウイルス、IgG

サイトメガロウイルス既感染の有無

β-D-グルカン、KL-6、LDH

ニューモシスチスを疑ったときのためのベースラインとして

HBs抗原, HBs抗体, HBc抗体

B型肝炎ウイルスの評価目的

LDL, HDL, TG

脂質異常症

HbA1c

糖尿病

舌、皮膚

カンジダを疑う白苔、帯状疱疹を疑う皮疹など。ベースラインとして

骨密度検査

ステロイド骨粗鬆症治療のためのベースラインとして

眼科検診

緑内障、40歳以上で家族歴があれば評価不要

 

⑤ ステロイドを始めた後の管理

 開始時には副作用のモニタリングをする必要があります。

開始後のモニタリング

血圧     血圧高地が持続するようであれば降圧薬追加

血糖  血糖チェック

不眠  必要に応じて眠剤、抗せん妄薬(定期内服/頓用)

電解質 血液検査  特に低K血症が起こりやすい

尿量、体重  心不全の既往があれば体重測定回数を増やす

・舌、帯状疱疹 カンジダの白苔や水疱など肉眼でチェック

 

いかがだったでしょうか。次回は動脈血液ガス分析の結果の解釈について勉強をしたいと考えています。