第22回 痛みのコントロール ~どう対応すればいいの?~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回はオンコロジック・エマージェンシーについて勉強しました。
本日は腫瘍の患者さんに多い痛みについてどのようにコントロールしていけばいいかについて、勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 疼痛のコントロール目標
② 疼痛のコントロール目標
③ アセトアミノフェン、NSAIDs使用時に注意すべき副作用
④ オピオイドの導入について
⑤ 異なる剤形を使い分けよう
皆さん、担癌患者のトラブルは対応できるでしょうか。腫瘍の患者さんにおいて、疼痛コントロールはほぼ必須と言っても過言ではないほど大事な知識ですね。疼痛管理は大丈夫という方も多いかもしれませんが、復習がてら一緒に学んでいきましょう。
第22回 痛みのコントロール ~どう対応すればいいの?~
以下は『内科レジデントの鉄則(聖路加国際病院内科チーフレジデント編)』をもとに記載しています。病棟管理の教科書はあまりないので、病棟管理について勉強したいけど何を勉強したら良いだろうと思う方は、この本をとっかかりに勉強すると良いと思っています。
① 疼痛のコントロール目標
WHOのがん疼痛治療ガイドラインの5大原則は、
原則1:経口投与 (by mouth)
原則2:定時投与 by the clock)
原則3:痛みに応じた最適な鎮痛薬を選択 (by the ladder)
原則4:患者ごとの至適量設定 (for the individual)
原則5:患者ごとの細やかな配慮 (with attention to detail)
WHO除痛ラダー
1stラダー:アセトアミノフェン、NSAIDsに代表される非オピオイド
3rdラダー:強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)
ペインコントロールの目標
1stステップ:痛みを感じずに眠ることができる
2ndステップ:安静時の疼痛が消失する
3rdステップ:体動時の疼痛が消失する
4thステップ:痛みを感じずに、日常のQOLが保たれる
まずは、安静時痛がないようにすることを目標とする。
③ アセトアミノフェン、NSAIDs使用時に注意すべき副作用
肝機能障害に注意しながら最大4000 mg/日まで増量可能ですが、癌患者では肝転移による肝機能低下を合併している場合もあり、極量を用いる場合には注意をしてください。
アセトアミノフェン300~1000 mgを内服または、15分以上かけて静注をする。静注は4-6時間以上間隔をあけて使用する。定期投与であれば1日3~4回とする。
副作用は、皮疹、アナフィラキシーなどによの薬剤過敏症に加え、肝機能障害、黄疸などが起こる可能性があり、肝機能の推移に注意します。もし、アセトアミノフェン過剰摂取時にはアセチルシステインで解毒も可能です。
NSAIDs
胃粘膜障害を起こすことがあり、NSAIDsによる胃粘膜障害を保護することにエビデンスがあるのはミソプロストール(サイトテック)、プロトンポンプ阻害剤の併用です。
腎障害としては腎動脈、細動脈の拡張作用の阻害があります。また急性間質性腎炎、急性尿細管壊死なども起こしうるとのことです。
喘息の既往があればアスピリン喘息の既往がないか確認しましょう。
トラマドール
トラマドールはコデイン類似の合成化合物でμオピオイド受容体に対する弱い親和性とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を持ちます。作用発現時間および持続時間は速効性と同程度である。神経障害性疼痛にも効果があることが示されています。
副作用は、嘔気、便秘、眠気などがあり、ノバミンなどの制吐薬とともに使用されることが多いです。他のオピオイド薬と同様けいれん発作誘発する場合があるため、脳転移やてんかんの既往などがある方には注意が必要です。また、中毒者にも投与できません。
トラムセットはアセトアミノフェンとトラマドールとの配合錠であるため、アセトアミノフェンの用量を超えないように注意しましょう。
④ オピオイドの導入について
WHOのラダーに従ってNSAIDsに加えて少量のオキシコンチン10 mg分2から始める。それと同時に、副作用の便秘、嘔気に対して導入当初から治療薬を加えておきます。
便秘に対してはマグネシウム製剤と腸管蠕動運動刺激薬(ラキソベロン、プルセニドなど)を使用します。また、制吐薬としてノバミンなどの中枢性D2Rアゴニストを使用することが多いです。嘔気は数日から1週間程度で耐性ができるので、耐性ができた段階でoffしましょう。
また、もう一つ注意すべきなのは突出痛です。突出痛に対してはレスキューを用います。レスキューは疼痛コントロールに経口製剤を使っているなら1日量の1/6、注射を用いているなら1時間量を用います。頓用で使用するレスキューは速効性がありかつ持続しないタイプが良いです。オキシコドンではオキノーム、モルヒネでは塩酸モルヒネ錠ないしは塩酸モルヒネ末を使用するのが良いでしょう。レスキューの回数が4回以上になるようであれば定時投与のオピオイド量を増やしましょう。
⑤ 異なる剤形を使い分けよう
経口投与できない場合は貼付・舌下。持続皮下注、静注を用いましょう。最近はフェントステープの使用が増えてきているようですが、使用時には有効血中濃度に達するには12時間かかるものとして使用するので、テープを貼ったその日は経口製剤も使用しましょう。
また、舌下錠や粘膜からの吸収で使える錠剤も使用可能です。
アブストラル
突出痛に対してフェンタニルとして100 mcgを開始用量として舌下投与します
イーフェン
突出痛に対してフェンタニルとして50または100mcgを開始用量として上奥歯の歯茎と頬粘膜の間に挟んで使用します。
オピオイドの剤形別換算
投与経路 |
静脈内投与・皮下投与 |
経口投与 |
直腸内投与 |
経皮投与 |
10~15mg |
30mg |
20mg |
||
200mg |
||||
15mg |
20mg |
|||
0.2~0.3mg |
※ |
(引用 https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_01_05.php)
いかがだったでしょうか。疼痛管理の復習はできたでしょうか。次回は、入院患者の病棟管理ということで栄養に関して勉強したいと思って