第60回 痛み ~危険な痛みを見逃すな!~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。腹痛について一緒に勉強しました。
本日も症候学で、痛みについて一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 痛みに敏感になりましょう
1,所見が乏しければ状態は悪くない? Dr林の痛みの乖離ルール
2,痛みが緩和されれば経過良好?
3,危険な疾患では痛みがあるはず?
4,腹痛の痛み止めは?
5,原因不明の腹痛への対処は?
- 勉強前の問題
- ① 痛みに敏感になりましょう
- 1,所見が乏しければ状態は悪くない? Dr林の痛みの乖離ルール
- 2,痛みが緩和されれば経過良好?
- 3,危険な疾患では痛みがあるはず?
- 4,腹痛の痛み止めは?
- 5,原因不明の腹痛への対処は?
救急外来で痛みを訴えて来られる患者さんは多いことでしょう。例えば胸痛、腹痛、咽頭痛など様々な痛みを訴えて病院を受診してきます。痛みの典型的なものはこれまでのブログを勉強してきたらだいたい想像つくと思いますが、非典型的なものは難しい。診断困難な中でもなんとかそれに近づけるように勉強してみましょう。
第60回 痛み ~危険な痛みを見逃すな!~
本文内容は主に『Dr. 林の当直裏御法度 ER問題解決の極上 Tips90』を参考に記載しています。もちろんみなさんもご存じの方がほとんどと思いますDr. 林の名著ですね。研修医の先生はぜひ手にとってみてください。
Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips90 第2版
- 作者: 林寛之
- 出版社/メーカー: 三輪書店
- 発売日: 2018/11/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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① 痛みに敏感になりましょう
こちらの著書では、痛みは第6のバイタルサインと言っており、痛みの重要性についてわかりやすく表現されています。
痛みの落とし穴して次の5つの項目について述べられています。
1,所見が乏しければ状態は悪くない?
2,痛みが緩和されれば経過良好?
3,危険な疾患では痛みがあるはず?
4,腹痛の痛み止めは?
5,原因不明の腹痛への対処は?
では、それぞれみていきましょう。
1,所見が乏しければ状態は悪くない? Dr林の痛みの乖離ルール
説明のつかない強い痛みは、精査の対象と心得る
例)喉が死ぬほど痛いのに、喉が赤くない
・急性喉頭蓋炎→甲状軟骨の高さで圧痛著明、気道緊急
・心筋梗塞→放散痛としての喉の痛み、歯の痛みもある、冷や汗
・大動脈解離→咽頭痛として来院することあり、頸動脈超音波、胸部CT
・SAH→首から上の激しい痛みの鑑別に常にSAHを考慮せよ
例2)お腹が死ぬほど痛いのに腹膜刺激症状がない
・血管系疾患は激痛でも腹部は柔らかいものと心得る
→腹部大動脈解離、腹部大動脈瘤切迫破裂、上腸間膜動脈閉塞症、上腸間膜動脈解離など
→虚血は痛い。絞扼性腸閉塞、卵巣捻転、精巣捻転
・心窩部痛なら、心筋梗塞と虫垂炎初期はだまされやすく、常に考慮せよ
・婦人科疾患は腹膜刺激症状が出にくい:異所性妊娠、卵巣捻転、卵巣出血など
・全身疾患で腹痛あり:IgA血管炎、DKA、尿閉、高カルシウム血症、中毒、便秘など
2,痛みが緩和されれば経過良好?
痛かったという病歴は、8/10以上の痛みが突然発症していたら要注意
大動脈解離、SAH→発症は突然で激痛だが来院時には痛みが引いてしまうことがあります。
3,危険な疾患では痛みがあるはず?
心筋梗塞→3~4人に1人は胸痛がない。特にキーワードは高齢、女性、糖尿病。
手がかりは嘔気・嘔吐、全身倦怠感、息切れ、放散痛が大事な手がかり。
大動脈解離→10%程度は痛みがない。特に失神で来院すると1/3に胸痛なし、脳梗塞で来院すると10%に胸痛なし。
SAHは4~13%に痛みがない。
4,腹痛の痛み止めは?
間欠的な腸閉塞や機能性腹痛のような痛みであれば、抗コリン薬であるブスコパンを使用すればいいが、感染性腸炎であった場合は禁忌となる。
診断のついていない非特異的腹痛では、アセトアミノフェンによる痛み止めが2015年の急性腹症ガイドラインでは推奨されています。NSAIDsは基本禁忌であり、NSAIDsを使うと腹膜刺激症状がマスクされてしまい診断が遅くなってしまいます。
#参考
アセトアミノフェンの静注薬は、1000mg(ただし,添付文書上は,体重50kg未満の成人には15mg/kgを上限)を15分で投与しますが,添付文書での1日総量4,000mgまで(60mg/kgとの記載もあり)とあり,この投与量での肝障害などの危惧は不要です。腹痛の程度を評価し,アセトアミノフェンとともに,モルヒネ,フェンタニルのようなオピオイド(レベル1,推奨度A)やペンタゾシン,ブプレノルフィンのような拮抗性鎮痛薬(レベル2,推奨度A)を使用することもできます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胆道疾患の痂痛に対しオピオイド類と同等の効果があり第1選択薬となりうる(レベル1,推奨度B)し,尿管結石の痂痛にはNSAIDsを用います。NSAIDsが使用できない場合にオピオイド類の使用が勧められています(レベルL推奨度A)。ブチルスコポラミンは蠕動痛のような痂痛に有効です。
(急性腹症診療ガイドライン2015、Thrombosis Medicine (2186-0327)7巻1号 Page59-63(2017.03))
5,原因不明の腹痛への対処は?
救急で診断のつかない腹痛が最近はCTの解像度も進歩し、約10%程度となった。50歳以上の非特異的腹痛の11%に後日癌が見つかったというので、救急で便塊の多い状況では診断できるはずもなく、救急では癌はみていないことを必ず告げ、専門家でフォローしてもらうことをお話する。
次回は『頭痛』の勉強を行います。