第2回 胸痛② ~巨大モンスターとの戦い~
2019/12/2 更新
第二弾ですMed-Dis(メディス)です。
前回に引き続き救急外来で見る胸痛の対応②について記載してみたいと思います。
勉強前の問題
①5 killer chest painとは?
②急性心筋梗塞の初期対応とは?
③MONAは全て同時に使用する?
④大動脈解離の診断のために造影CT取ろうかと思ったが腎機能が悪い場合の対応は?
⑤大動脈解離の初期対応は?
前回勉強した『5 killer chest painの疾患だ!』っと気づいても、その対応ができなければせっかく勉強したのに意味がありませんね。そこで、今回はその初期対応について学びましょう
第二回 胸痛② ~巨大モンスターとの戦い~
まずは、復習から。5 killer chest painとは、、、。もう簡単ですね。
1, 急性心筋梗塞
2, 大動脈解離
3, 肺血栓塞栓症
4, 緊張性気胸
5, 食道破裂
まず、問診、身体所見、検査を行いましょう。前回では検査として、血液検査、胸部X線、心電図をあげました。その他疾患特異的な検査も含めて更に知識を深めていきましょう。
① 急性心筋梗塞
検査はまず、心電図でどの壁運動が障害を受けているか想像します。ここが大事!心エコーを行う前に推定することで病変と推測される部分を集中して見ることができます。以下の3つだけ覚えましょう。後はだいたい推測できます。足し算になります。
心電図
V1-4 前壁中隔
ⅡⅢaVF 下壁
ⅠaVL,V5,6 側壁 (イチ、エル、ゴ、ロクと唱えましょう)
推定ができれば、次は心エコーです。と言いたいところですが、その前に、下壁梗塞のときには右室梗塞を疑うことを忘れずに。下壁梗塞の25~40%も合併すると言われており右室梗塞にニトログリセリンは禁忌となるからです。右室梗塞を疑ったらV4R, V5Rを検査してください。右室梗塞を疑ったらニトログリセリンを行かずにすぐに循環器コンサルト!
心エコーは心電図であたりを付けた場所を目安に壁運動の低下を見ましょう。壁運動の低下は心エコーの教科書を参考にしてくださいね。おすすめは、『絶対わかる!心エコー』がわかりやすいです。
そうだったのか! 絶対わかる心エコー〜見てイメージできる判読・計測・評価のコツ
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治療
初期対応は皆さんお得意、国家試験で学ぶMONAですね。ただ、MONAすべてを処置することはないので、必ず循環器内科コンサルテーションの上、投与の必要の有無を確認しましょう。
ちなみに2018年改訂版の急性冠症候群の治療について以下のように推奨されています。
酸素;低酸素血症のある患者さんに対しては推奨されていますが、なければルーチンに酸素投与することは推奨されていません。
硝酸薬;“心筋虚血による胸部症状のある患者に対して,ニトログリセリンを舌下またはスプレーの口腔内噴霧で投与する”は推奨されています。しかし、血圧低下者、右室梗塞のある患者、勃起不全の治療薬服用中の患者には推奨されていません。
勃起不全の患者にもだめなんですねー。“過度な血圧低下から心筋虚血やショックを誘発する可能性がある”からだそうです。気をつけましょう。
鎮痛薬;“硝酸薬投与後にも胸部症状が持続する患者に対して,塩酸モルヒネを投与する”は推奨1です。硝酸薬を投与してから様子見てって感じですね。“塩酸モルヒネは 2~4 mgを静脈内投与し,効果が不十分であれば5~15分ごとに2~8 mgずつ追加投与していく”のだそうです。
抗血小板薬;“ACS が強く疑われる患者に対してアスピリン(162~200 mg)を咀嚼服用させる”は推奨1でエビデンスレベルAです。“アスピリン服用の禁忌患者に対してチエノピリジン系抗血小板薬を投与する”も推奨(1)されています。
(参考;急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版))
循環器コンサルテーションの際に『STEMIの患者さんです対診をお願いします。初期対応として低酸素血症なく、酸素投与は控えています。アスピリン投与と胸痛続いているためミオコール投与してもよろしいでしょうか』などと、assessment & planeをお話できるとかっこいいですね~。
②大動脈解離
大動脈解離の診断のゴールデンスタンダードは造影CT。疑ったら必ず造影しましょう。Let’s 造影!
腎機能が悪く造影しにくいなと思ったあなた、そのときこそ造影前のメイロン頼み。
重曹輸液のプロトコルは“約150 mEq/Lの重曹を3mL/kg/h で造影前1時間,1 mL/kg/hで造影後6時間行う。”(腎障害患者におけるヨード造影剤に関するガイドライン2012年版)
簡単には、メイロン7% 180mlを500mLの生理食塩水に加えてもらい180mL/hrで点滴1時間、造影CTそして60mL/hrで6時間投与。で、準備したメイロンの液を使い切るくらいで良いのではないかと考えます。
次に診断がついたら、初期対応に移りましょう。
今回ブログ執筆にあたり、ガイドラインを調べたのですが現在出ている最新のガイドラインは『大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)』でした。しばらく更新されていないんですね。
治療に関しては大きくStanford A, Bによって治療法が変わります。国家試験で当たり前だよね~(汗)。じゃあ治療は、Stanford Aなら外科的治療だけど、Stanford Bならどうしますか?
そうですね降圧します。
β遮断薬を使って収縮期血圧100~120mmHgに降圧します。
(Caブロッカーではないんですね。教科書には使えると書いてあるので使って大丈夫です)
具体的には、プロプラノロール インデラル 2mg/2mL/A 1回2-10mg 10分以上かけて。
血圧上がらないように疼痛も管理してあげてね。レペタンなどで良いでしょう。
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確認事項
1,下壁梗塞といえば何誘導? ⅡⅢaVF
2,側壁梗塞といえば何誘導? ⅠaVL,V5,6
3,下壁梗塞を見たら何梗塞を疑い何誘導を追加する? 右室梗塞、V4R, V5R
4,ニトログリセリンは何には使わない(3つ) 血圧低下、右室梗塞、勃起不全
5,AMIにMONAは必ずしも処方するorしない しない
6,大動脈解離には何で何mmHgまで降圧する? β遮断薬、100-120 mmHg
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まとめ ・急性心筋梗塞を疑えば心電図から障害を受けている領域を推測し、エコーで確認する。 ・治療にニトログリセリンを使用する場合は血圧低下、右室梗塞、勃起不全を確認する。 ・下壁梗塞(Ⅱ、Ⅲ、aVf)の障害の場合は右室梗塞を考え V4R, V5Rを調べてニトロを行かずに循環器コンサルト。 ・大動脈解離を疑ったら造影CT、血圧はsBP 100-120mmHg以下で管理する。 |
いかがだったでしょうか。
今回は、急性心筋梗塞および大動脈解離の初期対応について学びました。次回は肺血栓塞栓症、緊張性気胸、食道破裂について記載したいと思います。