第104回 浮腫 ~どのような鑑別診断をあげますか?~

 

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。頭痛について一緒に勉強しました。

med-dis.hatenablog.com

本日は、浮腫ついて一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

① はじめに

【Step1】どこがむくみますか?

【Step2】いつからむくみ始めましたか?

【Step3】内服している薬剤・サプリメントはありませんか?

② よくある疾患の典型的な症状を理解する

 

本日は臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。

 

104回 浮腫 ~どのような鑑別診断をあげますか?~

 

本文内容は主に『外来を愉しむ 攻める問診』を参考に記載しています。この本は系統的に問診から鑑別診断を絞っていく方法が書かれており、わかりやすいです。臨床能力をあげたいと考える先生は是非読んでみてください。

 

① はじめに

 浮腫についてまず理解する必要があることが2点あります。

 1,組織における水分移動の生理、すなわちstarling仮説を理解すること

 2,浮腫の発生する機序ごとに疾患を分類しておくこと

身体診察や検査に映るまでに鑑別診断を数個程度に絞っておくのを目標とします。

Starling仮説

 毛細血管の内圧の増加:うっ血性心不全、上大静脈症候群、深部静脈血栓症、腎不全

 血漿の膠質浸透圧の減少:低栄養、ネフローゼ症候群、肝硬変

 間質液の膠質浸透圧の増加甲状腺機能低下症、lipedema(脂肪の異常蓄積)

 毛細血管の透過性の上昇アナフィラキシー、血管浮腫、熱傷、感染、炎症、特発性浮腫

 リンパ系の問題リンパ浮腫

 

【Step1】どこがむくみますか?

 この質問により患者に起こっている浮腫が全身的なものか、局所的なものかの検討をつけます。

蜂窩織炎や上大静脈症候群などの場合を除いて全身性浮腫を来す疾患

 :上肢深部静脈血栓症や上肢蜂窩織炎、結合組織病などを除き全身性浮腫を来す疾患が中心

 :注意を要します。なぜなら程度の軽い全身性浮腫は下肢のみの浮腫を呈する場合があるからです。

   両方の足か片方の足だけかを確認する一方の場合は局所両方の場合は全身性と局所性の両方を鑑別にあげます。

 

【Step2】いつからむくみ始めましたか?

 発症時期や経過から、突然発症、急性発症、緩徐発症にカテゴリー分類してみましょう。ただし、回答で「突然」とか「急に」という言葉がでたからといってそのまま突然発症や急性発症としないように注意しましょう。この2つを分けるためには「何月何日のなにをしているときに起こったか、具体的に言えますか?」という質問をすることでこちらが判断しましょう。

 浮腫が出現した時期を具体的に言える場合は薬剤や虫刺症によるアナフィラキシー、血管浮腫が該当し、緊急疾患として対処する必要があります。

 浮腫が出現した具体的な日時は言えないものの、発症が最近1~2週間以内と思われる場合は急性発症に分類します。このカテゴリーには、深部静脈血栓症や感染(蜂窩織炎など)、炎症(結晶誘発性関節炎など)、腎性浮腫(急性腎炎症候群など)が含まれます。

 さらに、鑑別を絞るために「むくんで切るところが痛みますか?」と質問をします。痛みを訴える場合は急性発症の疾患の中でも比較的急激に浮腫が出現する深部静脈血栓症や感染・炎症を伴う疾患の可能性が上昇します。痛みを伴わない場合においても、急性発症の浮腫を訴える場合には当日の診察で診断を確定させたいです。

 突然発症、急性発症のいずれにも該当しない場合は「むくみの程度は朝と夜で変わりますか?」と質問を続けます。朝から浮腫が存在する場合は腎性浮腫や肝性浮腫、甲状腺機能低下症といった膠質浸透圧の変化が原因となる疾患や、リンパ系の閉塞、膠原病などの毛細血管癖の透過性亢進が原因となる疾患を疑います。朝は軽度であるが夜になると増悪する場合にはうっ血性心不全に代表される静水圧の変化が浮腫の原因となる疾患であることが多い。

 

【Step3】内服している薬剤・サプリメントはありませんか?

 副作用として浮腫を起こす薬剤も多種多様であり、必ず聴取しておきたい項目です。典型的には使用開始や増量した後1~2ヶ月程度の間に出現することが多いが、1年以上同様で継続しているものでも突然浮腫が出現することがあるため先入観を持たずに聴取します。利尿薬や下剤に異常に詳しかったり、異常に執着したりする場合には、これらの薬剤の乱用による浮腫を疑います。

[浮腫をきたす体表的な薬剤]

  毛細血管の内圧

  体液量の増加:NSAIDs、ピオグリタゾン、シクロスポリン、副腎皮質ステロイドエストロゲンプロゲステロン、β遮断薬、抗うつ薬、抗痙攣薬(カルバマゼピン、ガバペンチンなど)など

 毛細血管(動脈側)の拡張

  カルシウム拮抗薬(特にアムロジピン、ニフェジピンなどのジヒドロピリジン系薬)、ヒドララジン

 毛細血管の透過性の上昇

  ACE阻害薬、インスリン、インターロイキン2

 

② よくある疾患の典型的な症状を理解する

・慢性静脈機能不全

 典型的には片側、あるいは両側下肢の足関節を中心とした緩徐発症の浮腫を訴えて来院する。日内変動があり夕方増悪します。浮腫と同時に、痛みや重だるさ、下肢樹脈瘤、色素沈着、潰瘍などが知られていますが、色素沈着は静脈機能不全による浮腫に特徴的な症状です。静脈不全をきたす原因として深部静脈血栓を確認する必要があります。

深部静脈血栓症

 典型的には片側下肢の急性発症の浮腫を訴えて来院します。痛み(自発痛、動作時痛、圧痛)や患肢のだるさを訴えることが多いです。下肢の深部静脈血栓症は、大腿静脈や総腸骨静脈に血栓を認める近位型と下腿の静脈に血栓が限局する遠位型に大別され、近位型の血栓は死亡率が高いので見逃さにようにします。血栓の存在する範囲と浮腫を認める範囲は相関せず下腿遠位の浮腫だとしても必ず近位まで検査を行います深部静脈血栓症を発症しやすい要因として、直近の体動を制限されるエピソードや全身性エリテマトーデス、心不全、過去の血栓性疾患といった既往歴も深部静脈血栓症の可能性を高めます。

・うっ血性心不全、肺高血圧症

 全身性に出現する緩徐発症の浮腫が典型的ですが、早期に両下肢や、臥床が長い患者においては体感のみの浮腫として出現することに留意します。浮腫の程度と心不全の重症では必ずしも相関しないとのこと。肺高血圧症の原因として、患者数の増加している睡眠時無呼吸症候群患者は存在するため、いびきや日中の眠気・倦怠感・集中力の低下、夜間頻尿の有無は確認しておく。

 

いかがでしたか。次回は『頭痛』の勉強を行います。