第103回 頭痛 ~どのような鑑別診断をあげますか?~

f:id:Med-Dis:20190901073042j:plain

こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。夜間頻尿、体重増加について一緒に勉強しました。

 

med-dis.hatenablog.com

 

本日は、頭痛ついて一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

① 頭痛

② SAHは見逃さないために

③ 片頭痛の臨床予測ツール

 

臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。

 

103回 頭痛 ~どのような鑑別診断をあげますか?~

 

本文内容は主に『イナダも学べばブリになる 林寛之、大西弘高編』を参考に記載しています。この本は研修医向けに書かれた本ですが、臨床推論をこれから勉強したいという先生にも非常に良い本だと思います。もし、興味があれば一読してみてください。

イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる: 現場のプロと臨床推論のプロが教える診断能力アップ術
 

① 頭痛

 頭痛は非常に頻度の高い疾患ですが、怖い頭痛は実は1-5%しかないため多くの場合は生命を脅かさない頭痛をきちんと診断せず、適当にNSAIDsでごまかして帰すが、患者のQOLを改善させてはいないことも少なくないです。こわい頭痛もきちんと診断してプライマリ・ケアの領域で貢献していきたいですね。

 二次性頭痛は患者の生命予後や機能予後に大きく影響を与えます。以下に該当した場合は要注意と考えましょう。

 SNOOPについて検索しましょう。

 S :Systemic symptoms  全身症状(発熱、倦怠、るいそう、筋肉痛)

    Systemic disease        全身疾患(悪性疾患、AIDS、妊娠)

 N :Neurological              神経学的局在所見

 O :Onset abrupt            突然発症、雷鳴様頭痛、いきんだときに発症

 O :Older                         40歳以降で初めての頭痛

 P :Pattern change         今までとは異なる頭痛(頻度、持続、人生最大の強さ、性状)

 

② SAHは見逃さないために

 人生最大での突然発症というキーワードつまり、雷鳴様頭痛(通常、発症から5分以内に頭痛のピークが来るもの)の場合は確かにSAHを疑います。実際には雷鳴様頭痛を呈する患者でCTを撮ると、実際にSAHであることは10%程度しかありませんSAHの頭痛は平均8.7/10というので8点以上痛みならCTを考慮しましょう。

 突然発症ですか?と聞くと患者さんがはいと答えることが多いです。実際には「頭痛が起きた時には、なにをしていましたか?」という質問が有用とのこと。また、注意が必要なのは血管が破れた時には痛みが強かったが、その後、出血が止まると頭痛が引いてくることもあります。発症時の痛みの程度をきちんと把握することが大事です。

 SAHの除外はオタワSAHのルールをチェックしましょう。これのどれにも当てはまらなければSAHは100%除外できるとのことです。ただし、15歳以上、意識清明、頭痛ピ-クまで1時間以内、神経所見なし、動脈瘤・SAH・脳腫瘍の既往なし、6ヶ月以内に3回以上繰り返す頭痛なしの場合に適応することができます。

 片頭痛は拍動性とおぼえていると見逃します。片頭痛は、①嘔気、②光過敏、③日常生活を妨げるような頭痛の3項目のうち2項目が当てはまれば片頭痛と診断して良いとのことです。

 救急外来受診患者の2%が頭痛ですが、SAHはそのうち1~3%の有病率とされています。また、神経学的所見が新たに出現する場合はあまり悩む必要がありませんが、SAHの患者の半数は神経学的所見がなく、SAHは患者の5.4%は初診時に誤診されていました。

 SAHを疑うときはまず単純CTを撮り、CTで所見が認められなければ腰椎穿刺を行うというプロセスが示されています。腰椎穿刺はそれ自体の痛みもありますし、穿刺後の頭痛をきたすこともあるため、CTで所見がなければそこで検討を終了することも多いです。

 

③ 片頭痛の臨床予測ツール

 片頭痛に関しての臨床予測ツールとしては片頭痛にはトリプタン系の薬剤が著効するため、最も積極的な診断がなされるべきなのに片頭痛患者の半数以下しか正しい診断を受けていないといいます。片頭痛にはPOUNDSという臨床予測ルールが使われてきましたがPOUNDはPulsating(拍動性)、hOurs(痛みの持続が4~72時間)、Unilateral(片側)、Nausea(嘔気)、Disabling(活動性の低下)の5項目を表し、4項目以上を満たすと陽性尤度比が24、3項目だと3.5、2項目以下だと0.41でした。

 各々の診断に対する臨床予測ルールが有るならば、臨床疫学やEBMの理解を深めるために利用すると良いです。そのときに重要なのは、各症候の感度や特異度の情報をSpIn, SnOutとともにどう活かすか、LRにはどのような意味があるかを理解して利用しましょう。

 

いかがでしたか。次回は『浮腫』の勉強を行います。