第106回 四肢のしびれ ~どのような鑑別診断をあげますか?~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。浮腫について一緒に勉強しました。

 

med-dis.hatenablog.com

本日は、四肢のしびれついて一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

① はじめに

【Step 1】 患者の訴えをパラフレーズさせてみる

【Step 2】 急性発症か

【Step 3】 緊急に対応すべき症状を伴わないか

【Step 4】 感覚障害の代表的な分布と解剖学的な部位診断

【Step 5】 患者背景から病因を予測する

② 疾患の典型症状を理解する

 

本日は臨床推論の勉強をしたいということで、臨床推論の本をもとに勉強を進めていきたいと考えています。実臨床ではどのように臨床推論を進めていけばいいのか、snap diagnosisだけでなくいろんな鑑別診断を上げながら、診断をしていけるように勉強していきましょう。

 

106回 四肢のしびれ ~どのような鑑別診断をあげますか?~

 

本文内容は主に『外来を愉しむ 攻める問診』を参考に記載しています。この本は系統的に問診から鑑別診断を絞っていく方法が書かれており、わかりやすいです。臨床能力をあげたいと考える先生は是非読んでみてください。

外来を愉しむ攻める問診 (Bunkodo Essential & Advanced M)

外来を愉しむ攻める問診 (Bunkodo Essential & Advanced M)

 

① はじめに

 しびれの訴えで患者さんがなにを訴えようとしているかを正確に把握する必要があります。しびれの中には緊急で対ししなければならない疾患が隠れています。そのことを意識した問診が必要となります。特にしびれの訴えが運動障害を含むこともあります

 

【Step 1】 患者の訴えをパラフレーズさせてみる

 患者さんにしびれという言葉を使わずに別の表現で症状を話してもらうようにしましょう。実はしびれという言葉にはその人固有の表現である場合がおおく、感覚障害だけでなく運動障害や痛みなどを含んでいることもあります。

 

【Step 2】 急性発症か

 見逃したくない疾患は、血管障害と急性圧迫表現によるものが多いです。まずは病歴から両者を想起できるかどうかを考えましょう。まずは以下の急性発症のパターンを意識しながら問診を進めてみましょう。

 1,発症して数分で症状が進行していく(sudden onset)

 2,発症して数時間で症状が進行していく(hyper-acute onset)

 3,発症して1~数日で症状が進行していく(acute onset)

 1の経過は管の破裂や大血管の破綻2の経過は管の閉塞と閉塞部位前後の拡張や壊死3は急性炎症性疾患での発症様式です。急性発症を訴えて来院したときにもさらに細かい時間経過を把握し、その背景にある病態を把握することが大切です。

 

【Step 3】 緊急に対応すべき症状を伴わないか

緊急に対応すべき症状は運動麻痺、四肢の血流障害、膀胱直腸障害、複数の末梢神経領域のしびれです。これらの症状の有無をclosed questionで確認しましょう。脳血管障害のうち、脳梗塞に関しては経静脈的血栓溶解療法(rt-PA)が治療法として選択肢に上がります。治療に関しては4.5時間という制限があり、そのため、大脳、脳幹病変による顔面の症状を含む片側運動麻痺などの症状がないかどうか、問診と同時に素早く、身体所見をとりましょう。

四肢の血流障害が急性動脈閉塞症によるものであれば、4-6時間が治療までのゴールデンタイムとなります。速やかな治療開始を目標とし、不要な問診などにより時間を失ってはいけません。

進行する運動麻痺や膀胱直腸障害を呈する脊髄緊急性は原因が急性の圧迫病変であれば、手術による減圧を急がなければなりません。担癌患者であればADLやQOLを考えてPSさえ良好であれば減圧目的の手術も積極的に考慮されます。この場合も時間の制限があり対処を急がれます。

多発性単神経炎のしびれの場合は血管炎があることを想起しなければいけません。複数の末梢神経領域にしびれがあると一元的に説明がつかず不定愁訴と考えてしまうかもしれないですが、実際は血管炎のこともあり得る。

 

【Step 4】 感覚障害の代表的な分布と解剖学的な部位診断

 四肢のしびれの適切な診断は、正しい解剖学的部位診断に基づいてその病院を探る点にあります。四肢のしびれを考えるときに体性感覚の神経経路、デルマトーム、末梢神経の体表分布を基本事項として確認しなければなりません。また、病巣別の代表的な感覚障害の分布パターンを大まかに知っておくことが大切です。

 

【Step 5】 患者背景から病因を予測する

 解剖学的な部位診断を行った後には、病因を系統的に考えるためにVINDICTE+Pを利用してアプローチを行いましょう。

V

Vascular

血管性疾患

I

Infection

感染性疾患

N

Neoplasm

腫瘍性疾患

D

Degenerative

変性疾患

I

Intoxication

中毒性疾患

C

Congenital

先天性疾患

A

Autoimmune

自己免疫性疾患

T

Trauma

外傷性疾患

E

Endocrine/metabolic/epileptic

内分泌代謝性、痙攣性疾患

P

psychosis

精神性疾患

 

② 疾患の典型症状を理解する

・馬尾症候群

 馬尾症候群は脊柱管内で腰仙部神経根が複数傷害される病態です。腰部痛、下肢の脱力、腱反射の低下、鞍状知覚消失、膀胱直腸障害が生じます。似たような臨床徴候を呈する、円錐部症候群、横断性脊髄炎、ギランバレー症候群と鑑別します。馬尾症候群と円錐部症候群は同時に生じることがあります。円錐部症候群では腱反射低下と下肢筋力低下が出現しない点が鑑別のポイントです。

 

いかがでしたか。次回は『腰痛』の勉強を行います。