第49回 CHDFの管理(第一章 CHD) ~どうやったらいいの?~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。ICU入室患者のアセスメントについて一緒に勉強しました。

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 本日はCHDF(第一章 CHD)について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 用語の整理

 ② 半透膜通過の2つのパターン

 ③ 血液浄化・ろ過原理においてターゲットとなる中分子

 ④ 補充液と透析液

 ⑤ CHD(除水なし) continuous hemodialysis :持続的血液透析

 ⑥ CHF (continuous hemofiltration:持続的血液ろ過)

 ⑦ CHD(除水あり)

救急やICUCHDF管理となる患者さんもいることでしょう。ただ、CHDFというとMEさんに任せてそのまんまってこともあるかもしれません。なかなか、腎臓内科の先生やMEさん以外にCHDFについて勉強している人は少ないかもしれません。ただ、ICU管理でCHDFを使えることは必須であると思います。本日から何回かに分けてCHDFをしっかりと勉強してみましょう。

 

49回 CHDFの管理(第一章 CHD) ~どうやったらいいの?~

 

本文内容は主に『こういうことだったのか!!CHDF 小尾口邦彦 著』を参考に記載しています。CHDFについて基礎から実際の使用方法まで細かく書かれています。また例題も多く図も多いためすごくわかりやすいのでもし、興味があれば手に取ってみてください。

こういうことだったのか!! CHDF

こういうことだったのか!! CHDF

 

 

① 用語の整理

 腎機能が低下した患者に行われる通常の血液浄化をRRT (renal replacement therapy:腎代替療法)と呼びます。病院内では透析のことをHD (hemodialysis)と呼んだりしますが、一部の病院ではHDF(hemodiafiltration:血液濾過透析)が行われます。こういった週に3回など間欠的に行われる血液浄化をIRRT (intermittent renal replacement therapy:間欠的腎代替療法)と呼びます。

 それと対比して持続的に行われる血液浄化をCRRT (continuous renal replacement therapy:持続的腎代替療法)と呼びます。CRRTには、CHD (continuous hemodialysis:持続的血液透析)、CHF (continuous hemofiltration:持続的血液ろ過)、CHDF (continuous hemodiafiltration:持続的血液ろ過透析)の3つがあります。

 

② 半透膜通過の2つのパターン

 半透膜通過のパターンには2つあり、一つが拡散でもう一つがろ過です。この2つを明確に区別することで、CHD、CHF、CHDFの違いがわかるようになります。

 拡散は小さな分子が自由にひろがるイメージです。水に醤油を一滴たらすと広がるものです。

 ろ過は半透膜を境にして浸透圧という力を利用してところてん式に分子を捨てる方法です。

 

③ 血液浄化・ろ過原理においてターゲットとなる中分子

 急性期医療の血液浄化においては炎症サイトカインを取り除けるかどうかが大切です。炎症性サイトカインの分子量は20000程度以内であり、20000程度までの分子を取り除くことを目標にします。イメージとしてはIL-6やTNFαなどを取り除くといった感じです。

 

④ 補充液と透析液

 一般的な維持血液透析(HD)は水道水を高度洗浄し透析粉を混ぜることによって作成する透析液を使用します。CRRTには工場で作られたバッグ製剤を使用します。この製剤をCHDにおいては透析ポンプを通じてヘモフィルターに入れるので役割としては透析液です。補充液を透析液として代用しています。CRRTはからCHFが始まったので、ろ過型人工腎臓用補液にも以前の名称が残っています。

 

⑤ CHD(除水なし) continuous hemodialysis :持続的血液透析

 血液ポンプ      100 mL/min

  補液ポンプ          mL/h

  ろ液ポンプ      500mL/hr

  透析液ポンプ 500mL/hr

CRRT機器のパネルを見るときには血液ポンプの流量を時間単位へ変換し統一することが大切です。

 血液ポンプ 100 mL/min×60 min=6000mL/時

 

CHDパフォーマンスをシミュレーションしてみましょう。

1, CHD血液ポンプ流量 6000 mL/h・透析液ポンプ流量 500 mL/h

 血液6000 mL中に取り除きたい小分子と中分子が各々100個あると仮定します。

<小分子>

小分子は血液6000 mLと透析液500 mLを合わせたスペースに拡散するので

  100 × 500/6500 = 7.7個 (7.7%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×7.7%=462 mL/hの血液を浄化できたことを意味します。これをクリアランスといいます。

<中分子>

 中分子は拡散できないので透析液に移動しません。中分子クリアランスは6000 mL×0%=0 mL/hです。

2, CHD血液ポンプ流量 100 mL/min・補液ポンプ mL/h、ろ液ポンプ 800 mL/h、透析液ポンプ流量 800 mL/h

  血液ポンプ流量はminをhに変換して6000 mL/h

<小分子>

小分子は血液6000 mLと透析液800 mLを合わせたスペースに拡散するので

  100 × 800/6800 = 11.8個 (11.8%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×11.8%=708 mL/h

<中分子>

 中分子は拡散できないので透析液に移動しません。中分子クリアランスは6000 mL×0%=0 mL/hです。

 

 この二つの計算により、小分子の透析流量よりやや低いパフォーマンスとなることがわかります。

 CHF透析液流量 500 mL/hなら、小分子は 500 mL/h弱現れると考えておきましょう。

 

3, CHD血液ポンプ流量 60mL/min・補液ポンプ mL/h、ろ液ポンプ 800 mL/h、透析液ポンプ流量 800 mL/h

  血液量を減らした場合

<小分子>

小分子は血液3600 mLと透析液800 mLを合わせたスペースに拡散するので

  100 × 800/4400 = 18.2個 (18.2%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×18.2%=708 mL/h

<中分子>

 中分子は拡散できないので透析液に移動しません。中分子クリアランスは6000 mL×0%=0 mL/hです。

 上記より、血液両を減らしても小分子のクリアランスに大きな変化はありませんでした。

まとめ】

 ・小分子クリアランスは透析液流量より若干少ない

 ・中分子クリアランスは期待できない

 ・血液流量の増減の小分子クリアランスへの影響は少ない

 ・HDに比してCHDの小分子クリアランスは極めて少ない

 

⑥ CHF (continuous hemofiltration:持続的血液ろ過)

 CHFは透析液注入口・透析液ポンプは使用しません。ろ過はところてん式に低分子を廃棄するのでした。

4, CHD血液ポンプ流量 100 mL/min・補液ポンプ 500 mL/h、ろ液ポンプ 500 mL/h、透析液ポンプ流量  mL/h

 血液ポンプだけ単位が違うので時間単位に変更しましょう。また、血液浄化のエンジンはあくまでもヘモフィルターということも認識しましょう。この場合6000 mLから500 mLをフィルターを通して無理やりろ液として吐き出しているイメージとなります。

 前回と同様に血液6000 mL中に取り除きたい小分子と中分子が各々100個あると仮定します。ろ過の原理ではフィルターの孔を通る分子はすべて押し出されます。

<小分子>

小分子は血液6000 mLとろ液500 mL押し出しますので、

  100 × 500/6000 = 8.3個 (8.3%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×8.3%=498 mL/h

<中分子>

 中分子も同様です。中分子クリアランスも6000 mL×8.3%=498 mL/hです。

【まとめ】

 少分子・中分子クリアランス=ろ液流量

 回路閉塞リスクをへらすために血液流量が重要

 

⑦ CHD(除水あり)

 CHDについて、除水がある場合は、ろ過の原理も加わります。ここが少しややこしいところですが、例題をみてみましょう。

5, CHD血液ポンプ流量 100 mL/min・補液ポンプ mL/h、ろ液ポンプ 800 mL/h、透析液ポンプ流量 500 mL/h

ろ液ポンプ流量 → 拡散原理

 ろ液ポンプ流量-透析液ポンプ流量 → ろ過原理

 となりますが、これが「CHDは基本拡散原理ですが、設定次第でろ過原理が加わります。

  CHD(除水あり)=CHD(除水なし)+CHF

 とイメージします。

<小分子>

まずは、拡散から。

 100 × 500/6500 = 7.7個 (7.7%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×7.7%=462 mL/h

次にろ過の原理

 (ろ液ポンプ流量800 mL/h)-(透析液ポンプ流量 500 mL/h)=中空糸外から無理に引っ張った流量30 mL/hです。

  100 × 300/6000 = 5個 (5%)が透析液中に移動します。小分子に関して6000 mL×5%=300 mL/h

よって、小分子クリアランスは762 mL/h

<中分子>

 中分子も同様です。拡散は 0mL/hでしたね。

 ろ過は、中分子クリアランスも6000 mL×5%=300 mL/hです。

よって、中分子クリアランスは300 mL/h

【まとめ】

 透析液流量が拡散原理を担う

 拡散原理が担う少分子クリアランスは透析液流量より若干低い

 ろ液ポンプ流量-透析液ポンプ流量=ろ液流量でありろ過原理が働く

 ろ液流量=ろ過原理が担う小中分子クリアランス

 小分子クリアランス=透析液流量弱+ろ液流量

 中分子クリアランス=ろ液流量

 

次回はいよいよ『CHDF』について勉強をしたいと考えています。