第62回 危険な患者の対処法 ~どう対応しましょう~
こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。頭痛について一緒に勉強しました。
本日も症候学で、危険な患者の対処法について一緒に勉強していきましょう。
勉強前の問題
① 危険な患者の対処法(コワい人偏)
② 鎮静のための会話術
③ 身体拘束、薬物拘束
④ 器質的疾患と精神疾患の見分け方
⑤ 警察を呼ぶ法律を知ろう
救急外来で危険な患者が訪れることはよくあることですね。そのときどう対応されているでしょうか。このような問題は一概に答えとなる対処はないかと思われます。ただ、実際にどのように対応すればよいか教科書上はどのように書かれているか勉強してみましょう。
第62回 危険な患者の対処法 ~どう対応しましょう~
本文内容は主に『Dr. 林の当直裏御法度 ER問題解決の極上 Tips90』を参考に記載しています。もちろんみなさんもご存じの方がほとんどと思いますDr. 林の名著ですね。研修医の先生はぜひ手にとってみてください。
Dr.林の当直裏御法度―ER問題解決の極上Tips90 第2版
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① 危険な患者の対処法(コワい人偏)
コワい人も病院には治療目的にいらっしゃるので、偏見を捨てて対応をする必要があります。社会的に問題がある人、わけあり(虐待)などは遠慮せずにトリアージのランクを一つ上げる。待合室の患者さんも怖がって椅子に座れないこともあります。
危険な人の診察の鉄則
・逃げ場を確保せよ
いざとなったら逃げ場がなければ生きた心地がしないもの。診察室のドアは開放しておきます。外に数名の医療者に立っておいてもらう。数の抑止力で対応します。
・腕のリーチの2倍離れて診察せよ
ちょっと頭に来たといって手が飛んでくることがあるので、パンチが届かないような距離感で診察する。
・机の上に武器になるものを置かない
興奮した患者さんがなんでも武器に使う可能性があります。
・パニックボタン・防犯カメラを用意せよ
いざという時のために警報器、録画機能付きの監視カメラ、ボイスレコーダーなどを備え付けておくとよい。
・警察を呼ぶのを躊躇しない
病院は治療をするところです。決して恫喝や脅迫を受けて診察する場所ではありません。暴力および器物破損は警察がすぐに動いてくれます。
② 鎮静のための会話術
怒りっぽい患者、医療者とうまくコミュニケーションが取れずいら立つ患者は医療者、患者ともお互いに不幸です。著書内では、言葉の鎮静10か条として以下の10個と示しています。
- できるだけ落ち着いた低いトーンで話す
- 低いトーンで短い簡潔な言葉で淡々と。
- 相手の態度を言語化する
- 怖いときは怖いと伝える
- 私はあなたの味方であると伝えよう
私はあなたの病気と闘うための味方なんですよという
- 事態に動じない
- 真意を読む
- 友人・家族を味方に引き入れる
- 冷たい飲み物、食べ物を
- 寡黙になったら危険信号
③ 身体拘束、薬物拘束
身体拘束のTipsは〇時〇分と記録し、最低五人を確保し、四肢と頭を押さえる必要があります。
薬物拘束のTipsも〇時〇分と記載する。
薬物を自分で飲んでもらえる時はリスペリドン1~3 mg経口。
まずは筋注で対処する。ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)の注射は残り少ない理性が飛んで行ってしまうので禁忌です。使うならジアゼパム静注で。まずはハロペリドール(セレネース)でヘロヘロになったところで静脈ラインを取り、追加でミダゾラム(ドルミカム)を静注するのが効果的。
アルコール離脱症状やベンゾジアゼピン離脱症状なら、ジアゼパムやミダゾラムが有効です。
5mg 筋注30分毎4回まで |
発熱があれば投与しない 悪性症候群に注意 |
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5~10 mg 筋注 |
もし静脈ラインがあれば2.5~5mg静注 呼吸抑制に注意 |
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3~4 mg/kg 筋注 |
もし静脈ラインがあれば、1~2 mg/kg静注 筋注製剤と静注製剤は異なるので注意 呼吸や循環抑制が少ないが、モニタリングは必須 5分以内に効果発現 |
④ 器質的疾患と精神疾患の見分け方
暴れる患者の約8割に器質的疾患があったという報告があります。実際器質的疾患と精神疾患を見分けるポイントを勉強しましょう。
器質的疾患によるせん妄 |
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急性発症 |
慢性経過 |
40歳以上 |
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見当識障害:新しい記憶の障害 |
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幻触覚、幻視が多い |
幻聴が多い |
意識レベルの変動 |
意識レベルは変動しない |
最近入院した器質的疾患あり |
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中毒、薬剤の変更 |
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失禁、発汗、眼振 |
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暴れる器質的疾患をいかに記します。
・慢性硬膜下血腫:半数は精神症状で来院する。外傷歴は不明のことも多い。
・低血糖:30%は好戦的になる。
・感染症+高齢者:インフルエンザや誤嚥性肺炎、尿路感染症でせん妄になりやすく、発熱も出ないことがある
・交感神経賦活化:薬剤性(覚醒剤、LSD)、甲状腺クリーゼ、アルコール離脱、ベンゾジアゼピン離脱、 疼痛(SAHなど)
・薬剤性:抗ヒスタミン薬、抗不安薬、抗コリン薬、NSAIDsなど
⑤ 警察を呼ぶ法律を知ろう
警察は暴行罪や器物損壊罪でないとすぐには動かないことを知っておく。少しでもパンチがかすったら警察を呼んでよい。警察を呼ぶ域値は低くてよいです。我慢すると徐々にエスカレートしてくるのでできるだけ早めに警察を呼びましょう。
警察を呼ぶ段階的アプローチを知りましょう。「ほかの患者さんに迷惑だから」という公共性が求められる迷惑行為は警察は動いてくれます。病院側の理由でなく、あくまでほかの患者さんがということが重要です。
また、病院側も対応の努力したという誠意と証拠を見せないといけません。
Step1) 病院全体に「暴言・暴力は許しません」ポスターを貼って、病院の姿勢を明示します
Step2) 段階的に警告・証拠の収集
次回は『下痢』の勉強を行います。