第9回 脳卒中の救急対応 ~急に右上下肢がうごかなくなって~

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こんにちはMed-Dis(メディス)と申します。前回はけいれんについて勉強しました。

 

med-dis.hatenablog.com

 

本日は脳卒中について一緒に勉強していきましょう。

勉強前の問題

 ① 脳卒中の超初期対応

 ② 問診

 ③ 身体所見・バイタルサイン

 ④ 検査

 ⑤ 治療(脳梗塞編)

 ⑥ 脳出血の初期治療

 救急で脳卒中の患者は1度は必ず見たことがあるでしょう。例えば『突然、右上下肢が動かなくなった』といったタイプの主訴であれば脳梗塞を強く疑います。その場合の対応はどのようにすればよいかすぐに出てきますか?

 

第9回 脳卒中の救急対応 ~急に右上下肢がうごかなくなって~

 

① 脳卒中の超初期対応

まあ、なにはともあれ救急外来に来た患者では必ずABCを確認しましょう。

特に気管挿管を考慮する場合の以下の五点について見ておきましょう

 1,意識障害

 2,ショック

 3,高二酸化炭素血症

 4,低酸素血症

 5,呼吸仕事量低下

この場合には挿管を考慮しましょう。

(救急外来 ただいま診断中! 坂本壮 著)

その後は問診を行います。

 

② 問診

病歴聴取・発症様式を把握せよ。脳梗塞に対するアルテプラーゼの適応は発症から4.5時間以内と決まっています。発症時間は「普段と変わらない最後の時間」となります。必ず確認しましょう。

 

③ 身体所見・バイタルサイン

  基本的には頭蓋内疾患は高血圧を呈する。しかし、くも膜下出血の場合には血圧が低下することもある。

  また、大動脈解離は必ず鑑別に入れましょう。脳卒中では最短時間で必要な情報を得る必要があります。そのためにはNIHSSスコアをきちんと取れるように練習しておきましょう。

 NIHSS:http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/dataarea/column/pdf1_4.pdf

 

④ 検査

検査(CTMRI以外)

 急性心筋梗塞や大動脈解離の除外のために、胸部X線、心電図検査はt-PA静注療法の前にかならず行いましょう。また、頚部血管エコーで総頸動脈に解離がないか必ずみておくようにしましょう。

画像検査(CTMRI

 急性期画像検査の評価項目として、CTMRIのDWIで評価しましょう。早期に広範な領域で虚血性変化を示した場合はt-PAの治療は推奨されていません。ASPECTSスコアはMCA領域の早期虚血アセイ変化の半定量化スコアです。ASPECTSスコアをつけましょう。t-PA療法例では、ASPECT 8点以上、DWI-ASPECTS 7点以上が転機良好例とされます。血栓回収療法はより低い点数でも考慮されます。

 FLAIR画像の信号変化が明らかになるのは発症後4.5時間程度経過してからとされる。DWI高信号でFLAIRで変化なければ早期であると推測できます。

 

⑤ 治療(脳梗塞編)

急性期治療

 適正治療指針では最低でも来院から60分以内の治療開始を推奨しており1分でも短縮できるように耐性を整えることが重要。

 t-PA使用時の確認事項もチェック

 t-PAの投与方法もチェック

急性期再発予防

1,心原性脳塞栓症

 ヘパリン:ヘパリンナトリウム5000単位に続けて、20, 000単位/日 24時間持続点滴:APTTが前値の1.5-2倍になるように投与

2,アテローム血栓脳梗塞

 アルガトロバン(ノバスタン):1日60mg, 24時間点滴静注。総量22Aまで投与可能。

 アスピリン:1回200mg 1日1回、クロピドグレル:1回75 mg 1日1回、

シロスタゾール:1回100 mg 1日2回

3,ラクナ梗塞

 アスピリン:1回200mg 1日1回

 オザグレルナトリウム:1回60 mg点滴静注1日2回

4、抗血小板薬二剤併用

 軽症脳梗塞に対する抗血小板薬二剤併用療法(DAPT)はグレードB。

 アスピリン:1回200 mg 1日1回+クロピドグレル1回75 mg 1日1回

5,脳保護療法

 発症24時間以内の脳梗塞に対するエダラボン投与のみ保険適応。腎機能障害がある患者では禁忌。(Cr2.0 mg/dl以上では慎重に考慮)

 エダラボン(ラジカット):1回30 mg (生食100mL)30分かけて点滴静注1日2回

 

⑥ 脳出血の初期治療

 脳出血

 脳出血の主な初期症状は、頭痛、王騎、嘔吐が順に多い傾向にある。神経所見では片麻痺意識障害が続く。脳出血における偏視の所見は病変の局在を類推するのに役立つ。画像診断をし、脳出血を診断した際には、血圧管理を行い収縮期血圧140 mmHg以下に降圧させましょう。

<処方例>

 ニカルジピン塩酸塩(ペルジピン注射液) 1-6 γ 点滴静注

 脳ヘルニア所見を認める場合には頭蓋内圧が亢進しているため、脳圧を下げる治療が必要となる。高張グリセロール、マンニトールを投与し、上半身挙上により頭蓋内圧を下げることができる。

くも膜下出血

 クモ膜下出血の典型的な症状としては突発する激しい頭痛、嘔気、嘔吐です。

クモ膜下出血の初期対応は降圧と安静です。診断後は降圧を行う。再出血予防のために積極的に降圧をするとガイドラインではなっていますが、明確な基準は確立していません。AHA/ASAでは収縮期血圧が160 mmHg程度です。また、部屋を暗くしたり、アイマスクを着用させたりして光刺激、音刺激、痛み刺激など不用意な刺激を避ける。

<処方例>

 ジアゼパムセルシン注射液 10 mg)5-10 mg静注

 ペンタゾシン(ペンタジン注射液 15)15-30 mg静注

 

理解度チェック(脳卒中

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 1,脳梗塞の発症の時間は?

 2,脳梗塞を疑った場合もt-PAを投与する前には〇〇を除外

 3,エダラボンの禁忌は?

 4,脳出血の降圧目標は?

 5,クモ膜下出血の降圧目標は?

 

 Ans. 1普段と変わらない最後の時間

   2 心筋梗塞、大動脈解離

   3 腎機能障害

   4 収縮期血圧140 mmHg以下

   5 日本では明確な基準はなし。AHA/ASAでは収縮期血圧が160 mmHg程度

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いかがだったでしょうか。次回は女性の腹痛の勉強をしたいと考えています。